10度目の正直だ! 史上最多となる日本馬4頭が悲願に挑む凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月2日=パリロンシャン)ウイークが幕を開けた。日刊スポーツでは大阪・奥田隼人記者がフランスへ出張。「日本の夜明けぜよ」と題した取材連載で、日本競馬界の悲願成就への道程に密着する。第1回は、ダービー馬ドウデュース(牡3、友道)で挑む武豊騎手(53)の意気込みに迫った。94年ホワイトマズルでの初挑戦から今年で10度目。ダービー初勝利も飾った節目の数字を追い風に、いざ歓喜へ-。

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レジェンド武豊騎手の挑戦の歴史は、今年で2桁を数えることになる。世界最高峰の凱旋門賞に挑み続けて10度目。「YUTAKA! TAKE!」。その名がロンシャン競馬場に響き渡るシーンを、日本中が待ちわびている。

武豊騎手 昔はみんな(凱旋門賞を)知らなかったけど、すっかり日本でも有名なレース。(自身が)このレースを有名にした1人かなと思っているので(笑い)。楽しみですよ。毎年ずっと大きな目標だし、いつか勝ちたいと思っているレース。今年も出られて本当にありがたいですし、今年こそはという気持ちはもちろんあります。

「10」。この数字には少なからず縁がある。98年スペシャルウィーク。日本最高峰のダービーを初めて制したのも、10度目の挑戦だった。今年、凱旋門賞でコンビを組むのはダービー最多6勝目を挙げたドウデュース。なかなか勝てず、競馬界の七不思議とも言われた朝日杯FSのタイトルをプレゼントしてくれた相棒だ。「ダービーも10回目だし、悲願の朝日杯はドウデュースだったし。まあ後付けが多いけどね」と笑うが、“持っている”男には運命的な何かを期待せずにいられない。

親交の深いドウデュースの松島正昭オーナーとは、2年連続のタッグとなる。

武豊騎手 去年もブルーム(11着)で乗せてもらいましたけど、今回は日本でダービーを勝って、その馬で挑めるというのは理想。1年前に小倉で新馬戦を勝って、1年後に凱旋門賞ですから。そうなればって願いはあるけど、そうなるなんて簡単じゃないと思っている。実現したな、という感じです。

94年ホワイトマズルでの初挑戦から日本馬5頭、外国馬4頭で凱旋門賞のゲートに入った。最高着順は13年キズナの4着(06年ディープインパクトは3位入線後に失格)。日本馬は69年スピードシンボリからのべ29頭が挑戦し、最高は2着が4回。世界の壁に阻まれ続けている。だが、武豊騎手の目には、確かに迫るその時が見えている。

武豊騎手 実力的には、日本馬がもう世界のトップレベルにいることは誰もが知っていること。世界中のビッグレースをいっぱい勝ってきているからね。あとは、運とかもあると思いますよ。

前哨戦のニエル賞は4着に敗れたが、悲観の色はない。「いいトライアルになったと思う。同じ距離、同じコースで走ってイメージしやすくなった」と本番へ手応えを得た。「自分は騎手として、全力を尽くすしかない。応援していただければ」。10度目の正直へ。歓喜の時は近い。