日本調教師会会長の中竹和也師(59)が25日、厩務員と調教助手で構成される4労組のうち関東労、美駒労、関西労の3労組が25日0時から24時間の全作業ストライキに入ったことを受けて、東京競馬場で報道陣の取材に応じた。中竹師は「ストライキは労働者の権利なので、それについては否定するものではありません。それを受けて、開催はなんとか成功させたいという思いで今日、全員野球でやっています」と話した。
25日の東京開催には栗東所属の調教師が20人以上、応援に駆けつけた。スト破りをした組合員もいたが、補充員を含め、総勢100人以上が開催に向けて待機をしていた。同師も9Rのパドックで他厩舎馬を引くなど、競馬開催に向けた対応をとった。中竹師が書面以外で今年の団交決裂について言及するのは今回が初めて。同師は「今まで私達は積極的にみなさんに発信しませんでした。われわれの身内の話を赤裸々に公表するにあたって、ファンの方にしらけられたり、いろんな議論が巻き起こって、競馬は楽しむためのものなのに違う方向にいってしまうのは、ファンの方にとっていいことではないと思っていましたから」と話した。
23日の団交決裂後、スト突入を避けるべく、中竹師は水面下で労組側との接触を試みたという。前日24日には関東労、美駒労のある美浦トレセンを訪ねて団交再開に向けた交渉に出たが、この日までに2回、申し入れを断られている。中竹師は「なかなかこちらから為す術がない状況の中で、それでもなんとか解決する方法を模索していかないといけない状況です」と苦しい胸の内を明かした。
昨年3月18日の開催ストライキに続き、今年はより広範囲に及ぶ全作業ストライキ。労組側の対応にはむなしさをにじませる。「ストライキは労組の権利ですから否定するつもりはありません。ですが、今回は水、カイバをつける保安要員も置かなかった。言いたくはありませんが、ホースマンとしてがっかりしました。動物が相手ですから…。今回が初のケースだと思います」と肩を落とした。
争点のスタート地点は新旧賃金体系とされるものだ。JRAの事業収益は97年の4兆円超えをピークに、98年以降は下降の一途をたどった。11年3月の東日本大震災による開催中止なども響き、同年は2兆2935億円にまで下落。JRAは54年ぶりに赤字に転落し、賞金などに該当する競走事業費もピーク時の1500億円から1206億円へと縮小されていた。
時間軸の前後はあるが、11年の厩舎制度改革により導入されたのが新賃金体系だった。同年よりトレセンに就労した厩務員、助手のみに適用され、旧賃金体系よりも給与が約20%低く、賃金上昇カーブも緩く設定。当然、ボーナスや退職金にも差が生まれる。一方で、“旧”とされる賃金体系の対象者は給与据え置き。当時、全体の賃金テーブル見直しがされることなく、2本立ての賃金体系が生じることが労使間の協定において結ばれて、現在に至っている。
昨年の春闘は、労組側が新旧賃金格差を給与の高い水準にまで上げる要求。今年は旧賃金体系者を含む、全体のベア3%が求められていた。今年の争点について、中竹師は「人員の減少(20馬房につき13人から1人減の12人態勢)による負担こそありましたが、彼らは経済的な痛みを伴わなかった。(売り上げが)下がった時に(給与を)下げなかった人が、(売り上げが)上がったから(給与を)上げてくれ、というのは理屈としてどうなのか。われわれとしては、賃金体系は新賃金体系一本であるとの認識です。彼らの数字については我々との相違があります」と話した。
団交決裂後、新たに提示する材料を調教師会も持ち合わせていない状況だ。交渉がまとまらなければ、組合員のボーナス支給にも影響が出ることが想定される。中竹師は「長引くのは大きなデメリット。パワハラ、有給休暇などわれわれが“制度関連”と呼んでいるものは納得してもらっています。今は賃金だけですね。今回に関しては出口の見えないトンネルです」と言葉を絞り出した。

