今季、大きな飛躍が期待されたし、個人的にも2桁勝利は確実にできると思っていたのが、巨人の先発・井上だった。投げるボールにはまぁまぁ力があるし、コントロールもまずまず。年齢的にも24歳で“伸びしろ”は大きな投手だと思っていた。しかし、中日打線を相手にし、広いバンテリンドームでの先発は2回を投げて4失点。これで2試合続けて5回もたずに降板。伸び悩む、その要因を探ってみた。

ピッチングを見ていると、淡泊に見えてしまう。前回の阪神戦ではコントロールに苦しみ、制球力を重視したのかもしれない。しかし、単純にカウントを悪くしたくないというだけで、簡単にストライクゾーンに投げてしまっている。力の入れどころ、抜きどころを投げ分けている様子もない。初回2死一塁、細川に打たれた2ランは内角低めの真っすぐを続けたもの。初球のストライクは素晴らしかったが、打者はその分、意識を強く持つ。そして続けた真っすぐは、ほんの少しだけ甘く入って仕留められた。もしかしたら、再び見逃してくれるだろうという考えがあったかもしれない。続くボスラーにも真っすぐがボールになった後、甘いスライダーを右翼スタンドに運ばれた。

自分がどうやって打者を抑えるか、分かっていない。もう少し球威を上げる。もう少し制球力をよくする。どちらかのレベルを上げれば、打者を抑える確率は間違いなく高まる。もっと具体的に言うなら、右打者に対して逃げていくシュート、チェンジアップ系の変化球を習得する。左打者に対しては胸元を突くような真っすぐを磨く。実際に打者と対峙(たいじ)したとき、自分がその打者をどうやって抑えるかを考え、そのために必要な技術を練習する。そうした考えがあって毎日を過ごせば、淡泊なピッチングにはならないと思う。

確かに球審のストライクゾーンが狭かった。試合時間が長くなったのも、その影響があると思う。しかし、中日の先発・高橋宏からは苦しい中でも必死さを感じた。四球を出しながらも4イニングで110球の力投だった。5回を投げられずに3失点したのは褒められないが、なんとかして勝ちたいという気持ちは伝わってきた。

高橋宏の本来の実力なら、ストライクゾーンが狭い球審でもゾーンの中で勝負できる。ただ、今年は低めの真っすぐがタレてしまい、力で抑え込むようなパワーピッチングができない。それでもなんとかしたいという執念は感じた。今年は間に合わなくても、来年以降はレベルを上げそうな予感がある。マウンドから「なんとかしてやろう」という気持ちが伝わってこない井上と、ここが決定的に違うところ。お互い勝ち星には結びつかなかったが、井上からすれば、チームは逆転して勝ってくれた。ただ、これでよしとするのではなく、自らのレベルアップを追求してほしい。(日刊スポーツ評論家)

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中日対巨人 1回終了、ベンチへ戻る井上(撮影・森本幸一)
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