誇らしげに手を振る。11月23日のパレードだ。オリックスとともに行われた5パレード。阪神の場合、ここに「日本一」の冠がつく。監督、コーチ、選手、球団関係者…。すべてが感激に浸ったに違いない。

日本一がこれほど喜ばしいことなのか。経験した者でしか味わえぬ感覚。岡田彰布は選手をここまで導いてこれたことに、体を震わせていた。そして、この喜びを来年も…と強く意識していた。

投手陣に関しては、現状は問題なし。連覇のカギはオフェンス。攻撃力をいかに高めるか。岡田の頭の中は、ここに絞られている。

そこで浮かぶ数字がある。「84」。143試合戦った今年のレギュラーシーズン。チーム本塁打は84本でしかなかった。これはリーグ5番目の少なさ(最も少なかったのは中日)。これは本拠地が影響している。ナゴヤ、甲子園、広島。この3球場は確かに広い。最多ホームランの巨人。東京ドームに横浜、そして神宮。球場の作りによって、多くの差がついた。しかし、日本一チームの年間84本塁打はやはり少ない…。

1985年の日本一シーズン。阪神は130試合で何本ホームランを記録したか。ラッキーゾーンがあった時代だが、その数、219本。これはやはり驚異的な数字である。岡田はその中にいた。あの打線で5番を打った。ホームランの魅力、本塁打の値打ちをしっている。「やっぱり一発で空気が変わるからな」。バース、掛布、真弓とともに、何度も球場の空気を変えてきた。

それがいまは84本にまで減少した。ホームランがなくても得点できる。それを実証したけど、やっぱり大きいのが欲しい。ホームランは野球の華。だから攻撃陣のメンバーを見渡す。トレードはなし。FA補強もなし。外国人も入れ替えはなし。ドラフトも長距離砲の指名なし。なしなしづくしで、いかにホームラン数を増やすか。

開幕3戦目。代打の代打に原口を送り、それが本塁打になった。チームの2023年初アーチでスタートしたものの、結局2桁本塁打を記録したのは佐藤輝(24本)、大山(19本)、森下(10本)の3人のみ。ノイジーが9本、ミエセスが5本。外国人選手がこの少なさ。迫力不足は否めなかった。

それでも日本シリーズ。6戦目、ノイジーがオリックス山本から放ったホームランは、今シリーズの阪神初アーチ。7戦ではまたノイジーがオリックス宮城から3ラン。これがいかに値打ちものであったか。オームランの威力をまざまざと見せつける結果になった。

この2本の本塁打でノイジー残留決定。そこまでいっていいほど、チームは正直、本塁打に飢えている。3人しかいなかった2桁ホームランバッターを最低あと2人増やす。ノイジーと出場機会が増えた場合のミエセス。近本は2桁打つ力はあるが、まずは中野との1、2番はヒット優先。下位で2桁打てそうなバッターはいなさそうだが、とにかくクリーンアップに6番までで、チーム本塁打を3桁に乗せる。これくらいの設定で、岡田は考えているはずだ。

森下が3番に定着すれば10本だった数は増える。大山も最低20本、いや30本か。そしてポイントになるのが佐藤輝だ。今シーズンの24本塁打からの大幅増。これは必須だし、最低30本以上。そうなれば、ホームランでも得点できる打線に変貌し、他球団に相当なプレッシャーを与えるはず。連覇へ、ホームランを増やせ! どんな形でも得点できるチームになったタイガース。ここにホームランが上乗せされれば、死角がまた少なくなっていく。【内匠宏幸】(敬称略)

オープニングセレモニーの花束贈呈で握手を交わす、吉村大阪府知事(左)と阪神岡田監督(撮影・村松万里子)
オープニングセレモニーの花束贈呈で握手を交わす、吉村大阪府知事(左)と阪神岡田監督(撮影・村松万里子)
オープニングセレモニーであいさつする阪神・近本光司選手会長(撮影・村松万里子)
オープニングセレモニーであいさつする阪神・近本光司選手会長(撮影・村松万里子)
愛日小学校同窓生と同級生から阪神・岡田彰布監督へ贈られた横断幕(撮影・村松万里子)
愛日小学校同窓生と同級生から阪神・岡田彰布監督へ贈られた横断幕(撮影・村松万里子)
御堂筋のオープニングセレモニー中、バスで話す大山悠輔内野手と中野拓夢内野手(撮影・村松万里子)
御堂筋のオープニングセレモニー中、バスで話す大山悠輔内野手と中野拓夢内野手(撮影・村松万里子)
御堂筋のオープニングセレモニー中、バスで話す大山悠輔内野手と中野拓夢内野手(撮影・村松万里子)
御堂筋のオープニングセレモニー中、バスで話す大山悠輔内野手と中野拓夢内野手(撮影・村松万里子)