大阪桐蔭が、東海大菅生(西東京)との雨中の激闘を制して初戦突破した。序盤に3本塁打で主導権を握り、強雨になった7回、プロ注目のエース松浦慶斗投手(3年)が3失点したが踏ん張って、貴重なリードを保った。今大会の目玉カードは、8回途中降雨コールド勝ち。「西の横綱」が豪快な試合運びを見せた。

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内野の白線がみるみる消えていく。甲子園の内野はあっという間に沼のように水浸しになった。豪雨の激闘で、大阪桐蔭が必死に耐え抜いた。4点リードの7回。マウンドは泥でぬかるみ、エース松浦は踏ん張りがきかない。左手も滑り、球が上ずる。2四球を与えて2死満塁。右中間への適時二塁打で1点差に迫られた。ベンチから伝令が飛んできた。「投手任せじゃなく、みんなの踏ん張りどころだぞ」。気を引き締めた。

絶体絶命のピンチは、雨で視界も煙る。4番小池にボール先行からフルカウントに戻し、渾身(こんしん)の速球を投げ込んだ。空振り三振でピンチを脱した。松浦は「下で回転して、全部、足で感覚をつかんで投げられたんで、ああいう結果(三振)になった」と振り返った。

1回に花田が豪快にバックスクリーンへと先制2ランを放ち、1点差に迫られた3回に2本塁打で優位を保った。雨は5回から強くなり、終盤、本降りになった。だが、ナインはベンチで口々に言う。「雨は自分たちのペースだ!」。黒土は泥と化し、ゴロも失速。前代未聞の豪雨の激闘で勝てたのは理由がある。西谷浩一監督(51)は試合開始時、ナインに伝えていた。

「雨を嫌がった方が負けだ。粘って、粘って、泥だらけになってやろう。雨は自分たちのペース。1球1球、アウト1つずつ、取っていこう」

どんな状況でも動じず、冷静にプレーした。過去に2度、春夏甲子園連覇を果たした名門の準備は、実に周到だった。指揮官は「甲子園は雨のなかで試合がある。毎年、準備をしてやってきました。そういう経験が生きた」と明かす。雨が降っても、マウンドから投げ、打席に立つ。守備にも就く。あえて足場が悪いなかで練習試合も続行した。「雨=中止」の固定観念はなく、これも日常の野球だった。甲子園で勝ち抜くため、あらゆる状況をシミュレーションしていた。

3月のセンバツは智弁学園(奈良)に屈辱の初戦敗退していた。指揮官が選手に問うたことがある。「日本一になりたい気持ちは本当か」。あれから5カ月。センバツ8強の東海大菅生を相手に競り勝ったのがナインの答えだ。西谷監督が言う。「タフなゲームになった。最後までやりたかった。粘り抜いて、粘り抜いて勝てた」。台風と長雨で4日の順延をへて、初戦を快勝。優勝候補の一角が、春と見違える姿をみせた。【酒井俊作】

◆高校野球の試合成立 高校野球では正式試合となる回数を7回としている。サスペンデッドゲームは適用しない。

◆夏の大会のコールドゲーム 98年1回戦の如水館-専大北上が7回裏2死、6-6の同点のまま降雨コールドの引き分け再試合となって以来23年ぶり。コールドで決着したのは、93年2回戦の鹿児島商工3-0堀越(8回表無死一塁)以来。

◆大阪対東京 大阪桐蔭が勝ち、大阪勢は夏の大会で東京勢に対し8勝8敗のタイとした(春は大阪勢の18勝6敗)。