4番のひと振りで、巨人がスタートダッシュを決めた。1点ビハインドの8回無死一塁で、ギャレット・ジョーンズ外野手(34)が来日1号となる決勝の逆転2ラン。観戦するキャシー夫人(25)と長男ジャクソン君(4)に予告弾を決め、ベンチの高橋由伸監督(40)を大喜びさせた。巨人の開幕3戦3勝は98年以来。昨季セ・リーグ王者のヤクルトを圧倒し、由伸巨人が加速度をつけた。

 これぞ4番の仕事だった。1点を追う8回無死一塁。1発が出れば逆転の場面で、ギャレットはヤクルト秋吉の失投を見逃さなかった。ど真ん中に来た直球をフルスイングし、右翼席中段まで運んだ。熱狂するスタンドに「メジャーのプレーオフで起こるような歓声だった。1号が勝ちに結びつき、うれしいね」と喜んだ。

 巨人軍85代4番を託された。開幕戦から4番を務める新外国人選手は球団初。「4番は(前所属の)ヤンキースでも打ったことがない。85代目なのは知らなかった。ヤンキースもそうだけど巨人も記録は細かいね」と笑いつつ「光栄だし、誰でも座れるわけじゃない」と伝統球団の枢軸を託された重みを理解している。

 メジャー122発の実績に加え、4番を託せるだけの「資質」があった。獲得決定前、担当者は凡退の場面の映像も高橋監督に見せ、吟味した。三振率が2割3分3厘と長距離砲としては低く、自分本位な打撃はしないという点も考慮し獲得を決めた。実際、開幕3戦で4四死球を選んだ。

 「品格」も備わる。入団前の身体検査で担当者を待たせないよう、早朝にもかかわらず30分前に会場入りした。来日後には通訳に「高橋監督の呼び方は『タカハシ』と『カントク』のどっちがいい? 失礼がないようにしたいんだ」と聞き、驚かせた。周囲の助言にも耳を傾け、日本野球と誠実に向き合っている。

 だからこそ、ドラマのような予告弾が生まれた。前夜、長男ジャクソン君に「ヒーローの選手がもらうマスコットがほしい」とおねだりされた。「分かったよ」と返すと、すかさずキャシー夫人に「もらうには本塁打を打たないと」と言われた。ギャレットは2人の顔を優しく見回しながら「約束するよ」と、ほほ笑んだ。お立ち台では家族に「愛してるよ」と感謝し、約束通りに2体のジャビット人形を持ち帰った。

 冷静に戦況を見つめていた高橋監督も、4番の逆転弾には手をたたいて喜び、感情をむき出しにした。「ここぞという時に打ってくれましたね。本当に最高の形で出してくれたのでうれしい」と目尻を下げた。昨季セ王者のヤクルト相手に、4番の一撃で18年ぶりの開幕3戦3勝。助っ人が新人監督を、最高の船出に送り出した。【浜本卓也】