頼む、勝ってくれ。阪神藤浪晋太郎投手(22)が7敗目を喫し、チームの連勝を4で止めてしまった。1回2死から連打され中日平田に先制3ランを浴びた。以降は7回まで無失点で踏ん張ったが、援護なく、登板7試合連続で白星なし。好調原口を代えてまでベテラン鶴岡とバッテリーを組み、13奪三振など復調の気配は見せつつも、とにかく、勝ち星だけが欲しい~。

 快音を残した打球がまだ明るい甲子園の空に舞った。マウンドの藤浪は1歩も動けない。ぼうぜん自失。またもショッキングな光景に出くわしてしまった。

 「力んでしまって、甘く入ってしまった。走者を背負って、打たれたくないという気持ちが強く入りすぎてしまった」

 1回だ。2者連続三振と快調に滑り出しながら、2死からエルナンデスに右前打を浴び、ビシエドにはボテボテのゴロをサード新井が投げ損ねる内野安打。本来ならチェンジとなっていたところが一、二塁となり、平田には狙いとは違う内角153キロを左翼席中段まで運ばれた。たった1球で、重すぎる3点を背負った。

 6月2日楽天戦での4勝目を最後に、白星が遠い。ベンチも藤浪の勝利をアシストしようと必死だった。スタメンマスクは3日前に今季初昇格した39歳鶴岡。昨季14勝のうち13勝はこのコンビで挙げていた。猛打で4連勝の立役者である原口をベンチに据えてまで、藤浪のストロングポイントを引き出せるベテランを起用。それでも初回失点の呪縛から、逃れられなかった。

 3点を追う5回の攻撃では2死満塁のチャンスで、金本監督は藤浪をそのまま打席に立たせた。頼む、勝ってくれ、勝ち投手になってくれ-。藤浪は三振に倒れ、その後も援護なし。願いは通じず、7戦勝ち星なしは自己ワーストに並んでしまった。

 2回以降の藤浪は落ち着き払ったマウンドさばきで奪三振ショーを演じた。7回まで追加点は与えず、今季最多タイの13奪三振まで記録した。それでも勝てない。5回の好機だけでなく、あれだけ元気だった打線が1点を取るのがやっと。勝利の女神はどこまでも、4年目右腕にそっぽを向いたままだ。

 「手応えというと大げさですけど、いろんな球種を使ってバランスも悪くなかった」

 試合後にベンチ裏から出てきた藤浪は前を向いた。金本監督も「みんなも同じだと思うけど、立ち直りつつあるのじゃないかなと。今日、手応えを感じたけどね」とV字回復を信じてじっと待つ構えだ。チームの5連勝はならず、5位に後退。何より、藤浪が復活星をつかまなければ、真夏の反攻は始まらない。【桝井聡】

 ▼藤浪は、鶴岡が移籍した14年と翌15年の2シーズンで、31試合に先発バッテリーを組み19勝4敗、防御率2・29と好成績。他の捕手との22試合では、6勝11敗で防御率3・82だった。