ベストルーキーの力を発揮して、連敗脱出に貢献した。阪神ドラフト1位高山俊外野手(23)が8回1死二、三塁で鋭く中前にはじき返し、DeNA桑原のグラブから白球がこぼれる執念の同点適時打。3回には新人王争いのライバル今永に右翼線二塁打を浴びせた。得点圏打率はリーグトップ。53年吉田義男の119安打に並び、80年岡田彰布の54打点を上回りと、阪神の歴代新人記録を次々と塗り替えていく。
もはやルーキーの顔ではない。1点を追う8回1死二、三塁。高山は絶好機でも冷静だった。初球スライダーが外れ、2球目のスライダーは内寄りへ。間合いは微妙に狂い、ファウルになる。その直後だ。少しだけ打席の後ろに移り、普段の場所へ。カーブを的確に捉え、ライナーで中堅を襲う。ダイビングキャッチする桑原のグラブからこぼれ、同点適時打になった。
「もうちょっと後ろに立って引きつけて、甘く入るところを。それがうまくハマって、いい形になりました。すごくうれしかった」
前の打席の6回無死一塁では今永の内角直球に詰まらされ、二ゴロ併殺。悔しさを味わっても、気負わず、汚名返上の打席で意地の一撃だ。「今日1日、今永投手でスライダーやカーブが多かった。(8回も)追い込まれるまでは、どっちかの球を待っていこうと思っていました」。計算し尽くして、新人王を争う今永の白星を消す好打を見舞った。
開幕から5カ月が過ぎ、風格すら漂い始める。8回の打席に入る直前、片岡打撃コーチから呼び止められた。「分かってるな?」。間髪入れずに答えた。「分かっています」。マウンドの田中とはこれまで4打数無安打2三振。球種、球の軌道…。敵の情報をインプットする頭脳を生かし、得点圏打率は3割8分9厘でリーグトップに躍り出た。
背筋を正して、レギュラーの王道を歩む。プロの攻めに苦しんだ5月。上体が前のめりになり、打撃に狂いが生じていたとき、金本監督から声を掛けられた。
「打てなくなったら、どうしてもボールをのぞきこんで見てしまう。俺も、現役のとき、同じ経験をしてきたからね」
背筋を伸ばしてスクッと立つ。最近も指揮官から指摘された。8月下旬。甲子園でティー打撃をしていると助言された。「入りすぎるなよ」。斜め前方から投げられるトスを打つと、自然と右肩が内側に入ってしまう。打撃は繊細だ。細やかな助言で、理想を追う。
この日のマルチ安打でシーズン119安打は、球団の新人では4位吉田義男に並んだ。55打点目は岡田彰布を抜いて単独3位だ。高山は言う。「1本1本かなと思います」。希代のドラ1ルーキーが、また、まばゆく輝いた。【酒井俊作】



