阪神から育成1位指名を受けた大商大・小野寺暖外野手(4年=京都翔英)は、プロから声が掛かって、うれし涙ではなく、悔し涙を流した。「同級生の橋本(中日2位)、大西(ヤクルト4位)が先に指名されて不安でどうしようもなかった」。

指名を受けてチームメートから温かい拍手が起きた瞬間、どっと涙がこぼれた。中学時代からの母子家庭で母由子さん、兄仁さんとの3人暮らしだった。小野寺は「大学にも奨学金で行かせてもらって、育成ではそれを返す足しにはならない。必ず支配下に上がって、レギュラーになって母親を楽にさせたい」と話した。

京都翔英では高校通算20本塁打、最高成績は京都ベスト8で甲子園出場はない。大学に入り立ての頃はレギュラーにもなれず、野球部を辞めることも考えたが富山陽一監督(52)から激励され、厳しい指導を受けながら成長。大学3年春と4年春はMVP、通算5本塁打の長距離打者に育った。

富山監督は「だれよりもあきらめずに練習する選手です。指名してくれた阪神に感謝です」。由子さんは「わたしの夢も乗っかっています。はばたいてほしい」と見守った。