中日小笠原慎之介投手(23)が「兄」へ惜別の力投を見せた。先発し西武打線を5回2安打無失点に封じた。3日に27歳で他界した木下雄介投手を「頼りになるお兄ちゃん」と慕ってきた左腕が、後半戦へつながる好投を天国に届けた。

先発マウンドに向かう登場曲に木下投手が使っていた湘南乃風「黄金魂」を選んだ。「(木下さんへの)感謝の気持ちと、本当だったら僕の後に投げてもらいたかった願いがあった。いつでもどこでも笑顔で話してくれる頼りになるお兄ちゃんだった。(継投が)かなわなかったのはちょっと僕の中で心残りです」。開幕時に戻したフォームで、直球もカーブもチェンジアップもキレキレだった。イニングの合間には天を仰いだ。「上から『おまえ、何打たれてんねん』と言っているんだろうな、とマウンドに上がった」。5回2安打5奪三振の結果に胸をなで下ろした。

木下さんは右肩、右肘のリハビリを行っていた7月6日、ナゴヤ球場での練習中に倒れて救急搬送。意識不明の状態が続き、今月3日に亡くなった。この日は、球団、選手会の意向で一塁ベンチには木下投手の背番号「98」のユニホームが掲げられ、全員が喪章をつけた。スタンドには球団旗などの上部を黒で縁取った弔旗が掲げられ、試合前には、両チームナイン、観客が黙とうした。

小笠原は前半戦先発ローテを守り、自己最多6勝をマーク。巻き返しを図る後半戦は柳とともに先発陣の軸と期待される。「チーム一丸となって目の前の1試合1試合を勝っていけるようにやっていきたい」。「兄」へ、次は白星を届ける。【伊東大介】

【関連記事】中日ニュース一覧