打ってよし、守ってよし! 広島のルーキー中村健人外野手(24)が攻守でアピールした。まずは右翼守備。3、4回ともに0-0の2死二塁の場面で、右前打を素早く本塁に送球。いずれも好返球で先制を狙う二塁走者を本塁で刺した。バットでは5回2死一、三塁で左前に2試合連続となる適時打。チームは開幕から正右翼手を固定できていない。トヨタ自動車出身の即戦力新人が、連日存在感を示している。

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中村健の白い歯が、鮮やかな芝の上で映えた。ナインがベンチの前で列をつくる。右翼守備から戻ってくるルーキーをハイタッチで迎えた。スキップしながら一塁側ベンチに引き揚げる背番号50が球場の視線を一身に集めた。

両軍無得点の3回2死二塁だった。吉川の右前打に対し、猛チャージ。2バウンドのストライク返球が捕手坂倉のミットに収まり、先制を狙う走者を刺した。4回2死二塁でも右前打を1バウンド返球で本塁アウトに。その肩は本物だった。「(打者が)引っ張り傾向で一、二塁間にヒットゾーンがあった。そうなると一番僕が準備をしないといけないのは当然」。入念な心の準備が大きな返球につながった。「どちらも0-0の場面。振り返ると本塁打を1本というか2本うてたようなもの」。いずれも先制点を防ぐ、大きなプレー。3万人を超えるファンからも拍手喝采で称賛された。

守備の勢いをそのままバットに乗せた。5回、2点を先制し、なおも続いた2死一、三塁の好機。戸郷の低め変化球を左前に運んだ。2試合連続の適時打。一時はリードを3点に広げた。「『乗ってけ、乗ってけ』とベンチから声をかけられていた。乗った雰囲気をつないでいいスイングができた」。スタメン起用は2試合連続。チームが開幕から正右翼手を固定できない中、勝負強い打撃と堅実な守備でアピールを重ねた。「結果が出たのはいいことだが、自己中心的には考えられない。チームの勝利のために一瞬一瞬を全力でやりたい」。ポスト鈴木誠也の一角がデーゲームで躍動した。

チームは逆転負けで2戦連続のヒーローとはならなかった。首位巨人とは2・5差に広がったが、中村健の攻守にわたる貢献が与えたインパクトは大きかった。【前山慎治】

◆中村健人(なかむら・けんと)1997年(平9)5月21日生まれ、愛知県出身。中京大中京では3年夏に甲子園出場。慶大-トヨタ自動車を経て21年ドラフト3位で広島入り。契約金5000万円、年俸1100万円(いずれも推定)。広角に打ち分ける技術と長打力を併せ持つ。183センチ、90キロ。右投げ右打ち。

○…堂林は10試合連続安打を放った。1番打者としては9戦連続となった。3回先頭では右中間へ二塁打。5回無死一塁では左前打と広角に打ち分けた。「自分がやるべきことをやるだけ。去年はレフト方向の打球が多かった。グラウンドを(広く)使えているのがいい傾向だと思う」。9戦連続の1番起用に応えた。長打も打てるリードオフマンが打線をけん引している。

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