西武高橋光成投手(26)が首位ソフトバンク打線を8回無失点に封じ、今季1勝目を挙げた。1イニング4奪三振(振り逃げあり)を含む11奪三振の力投。キャンプ地の宮崎・南郷から応援ツアーも訪れる中、エースにふさわしい働きを見せた。

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前方の長髪大柄のシルエットが、なんとなく西武のエースに見えた。2月10日、南郷キャンプ初めての休日。こちらはルーキーのいちご狩り取材を終え、南郷へ戻る自動車の中。すれ違う。思わず独り言が出る。「あっ、やっぱり」。

高橋は上り坂で自転車を必死にこいでいた。短髪の宮川哲投手(27)も一緒にこいでいた。

宮崎県南部の海岸線を走る、国道220号。海と橋がおりなす景観が美しい日南・大堂津でのこと。買い物にでも行くのだろうか。きついキャンプの休日に、なぜ苦笑いを? 2月は午後の早い段階で西日がまぶしくなり始める。2つの笑顔が照らされる。さながら青春ロードムービーのようなシーンだった。

翌日、キャンプ地で投げ終えた宮川に尋ねた。

「鵜戸神宮に行ったんです。自分、神社参拝とかたまに行くんで。それで、コウナ(光成)と一緒に行こうかって話をして、自転車で行こうってなって」

南郷にあるチーム宿舎から、県を代表する観光地、鵜戸神宮を目指して電動自転車で出発した。しかし。

「2人ともなめてたんすよ。行ったら、片道で2時間くらいかかって。きつかったっすね。風が強くて進まなくて」

南郷と鵜戸神宮は同じ日南市内にあるものの、約22キロある。小刻みながらアップダウンが何度もあり、電動とはいえ、それなりに体力を削られる。

道中、宮川は旅のBGMとして鳥羽一郎「兄弟船」などのラインアップを口ずさんだ。昨年、ブルペン待機中にボー・タカハシ投手(26)に伝授した十八番。もう1人の“タカハシ”にも聞かせると「なんで?」と笑われたという。

高橋は「人と違うものを使いたい」と、グラブにしても緑色を選ぶ。開幕投手も固定観念を脱し、中4日で臨んだ。トライ&トライ。岩のてっぺんに巻かれた縄に玉を投げ込む鵜戸神宮名物「運玉」も2個入れるなど、決める時は決める。前向きな好奇心と発想で、山あり谷ありのシーズンを走りきる。

なおこの日、2軍調整中の宮川もイースタン・リーグの日本ハム戦(鎌ケ谷)に先発し、4回7奪三振の力投で1軍昇格をアピールした。さすがの兄弟船だ。【金子真仁】

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