苦難を乗り越えた北の守護神が10セーブに達した。日本ハム田中正義投手(28)が「日本生命セ・パ交流戦」中日戦で、1点リードの9回に登板し、3者凡退に抑えてチームの連敗を止めた。

プロ7年目で初セーブ、初勝利と結果を出し、今度は2ケタセーブ。16年ドラフト1位でソフトバンク加入も6年間、ケガで結果を出せなかったが、五輪金メダリスト室伏広治氏(48)の著書から学んだ言葉を糧に、成果を出し続けている。

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1点差のしびれるマウンドでも、動じることはなかった。田中正は、先頭の細川を153キロの内角直球で一邪飛に打ち取ると、溝脇は151キロの内角直球で右飛。村松への6球目は157キロの低め直球を見せた後、フォークで中飛に打ち取り、締めた。「要所で甘いところにいって、結構芯に当たる打球が多かったので、しっかり明日は空振りをとれるようにしたい」。おごることは一切ない。勝って、かぶとの緒を締めた。

これで10セーブに到達。6月10日の前回登板から中5日と間隔が空いたが、気迫のこもった投球は、変わらない。「ちょっと間も空いていたので。明日明後日はもう少しいい球を投げられるんじゃないかなと」と、まだまだ余力があることをアピールした。

この日も笑顔を貫きマウンドに上がった。「楽しむ」。これは6年間、ケガに苦しんだ田中正がはい上がるための1つのキーワードだった。糧にしてきたのはアテネ五輪ハンマー投げ金メダリスト室伏広治氏の著書「ゾーンの入り方」。「世界記録を目指してやってた方が、記録を目指すのも大事ですが、しっかり大地を踏んで空に天高く投げるっていうことを、楽しみなさいっていうの言われていて」。世界を制したアスリートの教えにならい、重圧をはねのけ渾身(こんしん)のボールを投げ込んだ。

幼少期に何度も通った“故郷”横浜スタジアムでは登板の機会がなかったが、15日の試合が降雨ノーゲームとなり19日に、もう1度、登板する可能性もある。「(交流戦は)あと3試合ですかね。名古屋、名古屋、横浜で試合が。そしたら3日空くので、あと3試合全力で頑張って11セーブ目を目指したい」。ハマ生まれのハムの大魔神が、名古屋でも横浜でも、仁王立ちする。【永野高輔】

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