9回表のロッテの守備。研ぎ澄まされた洞察力と思いきりの良い判断力が、勝利に結び付けた。

益田直也投手(33)が先頭の日本ハム上川畑に左中間を破る二塁打を浴び、田村龍弘捕手(29)が江越のバントを捕球後に三塁へ送球し野選。無死一、三塁のピンチ。二塁盗塁で二、三塁となって迎えた2-1からの4球目だった。

ベンチに視線を送る田村。ベンチからの指示。思いは合致した。打者の石井がスクイズバントを試みたが、外角に大きく外して空振りを奪った。

田村は「あの場面、投手が益田さんでなかなか打つのが難しいところで、石井みたいな小技とかするタイプの打者。あるかなという勘ですね」。三塁走者を三本間で挟み、タッチアウト。1死三塁に状況は変わったが、ピンチに変わりはない。

さらに3-2となった6球目だった。四球覚悟で再び外角に大きく外した。三塁走者もアウトにし、三振ゲッツーで無得点に封じた。

フルカウントからの明らかなボール球要求に関して問われた田村は「だからこそ、割り切って外せるところ」と言い切った。「どうせ四球になって一、三塁になっても、また走られる。(1死二、三塁になっても)9回で1点も取られたらダメなところなので、走者満塁にしても良いところ。3-2だから外しにくいということはないかなと思います」。

今季、新庄監督が実行してきた野球を徹底研究した結果でもある。「あれが松本(剛)さんや清宮だったら、ほぼほぼゼロに近いところだと思うので、打者の巡り合わせや投手の力の兼ね合いも含めて予想外のことではない」。被安打と野選で招いた危機的状況下でも、動揺することはなかった。経験豊かなバッテリーとベンチワークの信頼関係も含めた戦略に裏付けられたうえでの「勘かな」だった。

吉井理人監督(58)も「なかなかあり得ない作戦だと思うんですけれど、勝負をかけました。(フルカウントから外した投球も)あそこは1点もやりたくなかったので、ギャンブルですね。もちろん、みんなで(相手を)探りながらやっているので、その中で『やろうか』という感じです」と明かした。

プロの理論と野球勘が詰まったスクイズ阻止が、9回裏のロッテのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。【鎌田直秀】

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