ソフトバンクが連敗を4で止め、恒例の「ファイト! 九州デー」の今季最終戦を勝利で締めた。

年に1度の長崎開催で、藤本博史監督(59)が打線をテコ入れ。この日1軍に再昇格させて「2番三塁」で起用した野村勇内野手(26)が大当たり。安打出塁した初回1死満塁の三塁走者で、二飛で生還する先制の「神生還」を決め、一挙4得点を導いた。打線は11安打7得点で首位オリックスを圧倒。勝率を5割に戻した。

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試合開始早々、長崎ビッグNに詰めかけた鷹党の歓声が湧き上がった。0-0の初回1死満塁。野村勇が先制点をもぎ取る“神生還”を決めた。昇格即「2番三塁」での起用に応え、第1打席で先発ワゲスパックから中前打。その後三塁まで進み、5番中村晃が放った内野後方への二飛に意を決した。「(二塁手の捕球)体勢が悪かったのでセーフになる確率が高いと思った」。セオリー度外視のタッチアップ。ホームへ頭から突っ込むと、捕手のタッチをかいくぐり、左手でベースに触れた。

1度はアウトの判定がくだったが、藤本監督がすかさずリクエスト。セーフに覆った。「たぶん初めて」と内野フライで先制の生還。藤本監督は「アウトになっとったらね。あの4点がないんやからね。(野村)勇の足は相手にとって脅威になるよね」と勇気ある好走塁を絶賛した。この1プレーで勢いづいた打線は、10人攻撃の猛攻で一気に4得点。3回にも3点を加え、8連勝中だった猛牛の勢いを序盤で断ち切った。

藤本監督の大きな決断が勝利として結実した。この日1軍昇格したばかりのドラフト3位ルーキー生海を1番、2番には野村勇を起用した。指揮官は「勢いというか。起爆剤になってくれたらいいかな」と4連敗中のチームにテコ入れを敢行。前週は千葉、仙台と敵地6連戦で1勝5敗。散々な1週間で最大「15」あった貯金も使い果たし、27日に藤本政権初の借金生活に突入した。Aクラス死守、上位猛追へ、何としても負の流れを変えたかった。

野村勇は8回にも左翼線を破る二塁打を放ち、今季初のマルチ安打でバットでも結果を残した。ウエスタン・リーグでは打率4割超えと打ちまくり、今か今かと1軍の舞台を待ちわびていた。「本当に悔しい気持ちを糧に、練習して今日この場所に立っている。本当に良かった」と充実の汗をぬぐった。

チームは連敗を4で止め、勝率5割に復帰。野村勇は眉毛にアイブラックをつけてお立ち台に上がり、最後まで長崎を盛り上げた。「1軍で活躍してナンボ。チームのために自分が頑張れば」。再浮上へのキーマンに期待の若鷹が名乗りを上げた。【佐藤究】

野村勇「神走塁」なぜ二飛?「内野手が外野まで廻り込んでの捕球でない」記録員