ソフトバンクの高卒3年目、井上朋也内野手(20)が通算31打席目でプロ初本塁打を放ち、チームを単独2位へ導いた。同点で迎えた5回、先頭で左翼スタンドに決勝ソロをたたきこんだ。若武者の一打で勢いづいた打線は11安打10得点。9月初の2桁得点で、CS出場を争うロッテとの直接対決2連戦で2連勝を飾った。CSファーストステージの本拠地福岡開催へ、このまま突っ走る。

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5回裏。三塁守備に向かう20歳に、左翼席の鷹党から井上コールが起きた。プロ初本塁打を決め、自分の名前が球場にこだまする。初の光景を目に焼き付け、若武者は深々とファンに頭を下げた。「お父さんとお母さんに渡します」。尻ポケットに入れていた記念球を片手に、ヒーローインタビューでは無数のフラッシュライトを浴びた。

同点に追いつかれた直後の5回表、ロッテ小島の直球を振りぬいた。「打った瞬間に確信しました」。9月6日にプロ初昇格し、通算31打席目。うれしいプロ初アーチは値千金の決勝弾だ。ダイヤモンド1周は「興奮してて覚えてないです」と初々しい。ビジターまで異例の視察に訪れた王会長は「良かったね。これからもっと打つよ」と今後の活躍に太鼓判を押した。

スラッガーの片りんはプロ入り前から備わっていた。埼玉の名門、花咲徳栄出身。かつてグラウンドの左翼後方に位置する室内練習場の窓ガラスを1度だけ割ったことがある。屋根付近の窓で、飛距離にして120メートル前後。過去に割ったことがあるのは、同じ花咲徳栄出身で憧れの日本ハム野村佑希だけだった。同校の岩井隆監督が「井上はプロでも活躍する」と確信した瞬間だった。高校通算50発は、だてじゃない。

生駒ボーイズ(奈良)に所属した中学時代も才能は群を抜いていた。中3の南大阪大会では準決勝で2発、ダブルヘッダーの決勝戦では3発をマーク。両翼90メートルの球場で驚異の1日5本塁打の離れ業を見せた。何度も周囲の度肝を抜いてきた高卒3年目の20歳だ。

井上の一打で打線は9月初の2桁得点。11安打10得点で、CS出場を争うロッテとの直接対決2連戦で2連勝を飾った。単独2位浮上で貯金1。ソフトバンク待望の起爆剤は「残りの試合すべて勝って、なんとか2位でCSに行けるように頑張りたいです」と頼もしい。【只松憲】

◆花咲徳栄・岩井隆監督(教え子のソフトバンク井上のプロ1号に)「CSがかかった大事な時期に使っていただいて、本当にありがたいです。初安打の時に『これから大事だぞ』とメールしたら『分かっています、大丈夫です』と返事が来ました。慎重な子なので、何かつかんだのかなと思いました」

◆井上朋也(いのうえ・ともや)2003年(平15)1月28日、大阪府生まれ。花咲徳栄では1年夏、2年夏に甲子園出場。3年時は甲子園交流試合に出場し、高校通算50本塁打。20年ドラフト1位でソフトバンクに入団。昨年8月の椎間板ヘルニア手術など乗り越え、3年目の今年9月6日ロッテ戦で1軍デビュー。今季年俸は推定860万円。背番号43。愛称はゴリ。181センチ、88キロ。右投げ右打ち。