23年日本シリーズ1号は、オリックスの4番が放った。1点を追う4回2死。今シリーズで初めて4番に座った頓宮裕真捕手(26)が、阪神伊藤将の143キロ直球を捉えた。2ボール2ストライクと追い込まれながら、5球目をバックスクリーン左へ。その瞬間、甲子園が静まりかえった。

「感触は結構いい打ち方ができたので、入れ! と思いながら走っていました。仕留められたのでよかったと思います」

6月15日の交流戦の9回、阪神の守護神・湯浅から同点ソロを放った。この日も試合を振りだしに戻し、勝利につなげる一撃に。さらに先頭の6回は、阪神ブルワーから左前打。マルチ安打で、若月の犠飛による5点目につながる好機をつくった。「ベンチの雰囲気はよかったので。次の回も点が取れましたし」。盛り上がる仲間のエネルギーが、活力になる。

第3戦で初めて、一塁守備に就いた。9月下旬に左足薬指を骨折。全治8週間の診断で、万全とはほど遠い状態でCSファイナルステージ、日本シリーズへと続く大詰めを迎えることになった。患部には、今も痛みが残る。だが、出ると決めたときから、腹をくくった。泣き言は言わない。中嶋監督らから足の状態を聞かれても「絶対に痛いとは言いません」と誓った。走攻守すべてで貢献する覚悟を決めて、グラウンドに戻ってきた。

6回の出塁時に代走・安達と交代。最後までグラウンドに立つことはできなかった。それでもスタメンで示した存在感。虎党を仰天させた同点ソロで、パの首位打者の打力を示した。6月15日の9回、自身の同点ソロに決勝弾で続いた杉本は、3試合連続ベンチ外。左足首の痛みと向き合いながら、出場に向けて懸命の調整を続ける。「1人1人が頑張れば、いい結果が出ると思う」と全員でカバーしながら、第4戦で王手をかける。【堀まどか】

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