西武の西川愛也外野手(24)は自身のSNSでさらっとつぶやいた。
「別になんとも思ってないよ。別に」
何とも思っていない。寂しい、以外は。
「寂しいですよ。寂しいですよね」
泣いたりも?
「泣きそうにはなりました」
大阪・浜寺ボーイズから花咲徳栄(埼玉)、そして西武へ。しかも同じ外野手。中学、高校、プロと常に背中を見ていた愛斗外野手(26)が、現役ドラフトでロッテに移籍した。
「まぁ、中学からずっと一緒でしたからね。かっこ良かったですよ。優しい先輩でした。めっちゃ優しかった。中学の先輩って、けっこうガツガツする感じとかあるじゃないですか。愛斗さん、そんなの全然なくて」
愛斗も西川のことをずっと見てきた。連続打席無安打記録が続いている時、こう言っていた。
「マナヤ、あいつ、めちゃくちゃバカ。鈍感です。例えば僕が思いついたことをパッと言うじゃないですか。あいつ、それを信じちゃうんです。ずっと信じてるんです。純粋です」
でもある意味、尊敬していた部分もあったという。
「何がすごいって、あいつ、グラウンドで笑ってるとこじゃないですか? 僕が(連続無安打の)あの状況だったら笑えないッスよ。そういう面ではバカなのがいい意味で働いている時もあります」
愛斗が言うように、西川はよく笑っている。苦しい時期にも。本当はとても真面目なのに道化を演じている…そう感じることさえあるほどに。
シンパシーは伝わる。西川は憧れの先輩の愛に、ずっと支えられてきた。投手のために全力で守る。その姿を追ってきた。
「愛斗さんがロッテに行くことが決まって、写真とか見返したんです。そしたら、けっこう2人の写真があって」
笑い合ったり、ふざけていたり。
「あぁ、久しぶりに離れるんだなって」
17日、埼玉・加須市で行われた花咲徳栄OBによる「加須きずな野球教室」に参加した。本当は相棒のような、親友のような、あの人もいるはずだった。何かと慌ただしい時期。いつもいるのに、いなかった。
どんな球でも背走して食らいついてつかみ取る、その背中を越えられる1発で、元気な姿を見せたい。
「ぼこぼこにしたるわ」
笑って宣戦布告された。やり返してまた1年後、青春の地で愛愛コンビが肩を組む。【金子真仁】