開幕スタメン奪取へ、アピール大成功! 阪神高卒3年目の前川右京外野手(20)が沖縄・宜野座キャンプを打ち上げた27日、岡田彰布監督(66)からキャンプ野手MVPに選出された。今春は実戦8試合で打率4割3分7厘、1本塁打と大暴れ。右翼に加えて左翼の守備も猛特訓し、指揮官に「当然1軍戦力として見ている」と言わしめるほど存在感を高めた。激しい外野両翼争いが続く中、このまま一気にレギュラーを奪いにかかる。

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岡田監督の言葉に迷いはなかった。沖縄・宜野座キャンプを打ち上げた直後。投打のMVPを問われ「誰だろう…」と間を置いたのは一瞬だけだ。「まあ、打つ方では前川がね。すごく飛距離も伸びたし、下半身もドシッとして、いいものを見せてくれたんで、打つ方では前川が一番、期待値が上がった」。即答に近いスピード感がこの1カ月の証しだった。

キャンプ序盤から飛距離アップで首脳陣をうならせ続けた。オフの自主トレ中に下半身が浮き上がらない新フォームを固め、ラインドライブ気味だった飛球が弧を描くようになった。初実戦となった11日の紅白戦ではいきなり4打数4安打。最終的に実戦8試合で打率4割3分7厘、1本塁打と好成績をキープすれば、キャンプ中盤はまだ辛口だった指揮官も最後は絶賛するしかない。

17日楽天戦では状況に応じた打撃ができず、岡田監督から「野球勘とか勉強せなあかん」と厳しい指摘も受けた。それでも翌18日広島戦では2安打で汚名返上。オープン戦3試合で3四球を選ぶなどチームバッティングも身についてきた。岡田監督はキャンプを走り抜いた20歳を「大したもんよ。当然1軍戦力として見てるけどね」と褒めたたえた。

とはいえ、前川本人に浮かれた様子はない。指揮官直々のMVP選出を伝え聞くと「正直めちゃくちゃビックリしました。他にもっと活躍されている選手がいたので、僕じゃないかなと思っていた」と目を丸くした。一方で「バッティングを評価していただいたと思います」と想像し、飛距離アップの実感について「多少はあります」とニッコリ。このまま開幕スタメン奪取へ突っ走る覚悟だ。

キャンプでは右翼だけでなく、新たに左翼守備も猛特訓。右翼森下どころか左翼ノイジーを脅かす存在として、評価を急上昇させている。昨季は1軍33試合に出場したが、8月に出場選手登録を抹消されて以降は1軍出場がなかった。「シーズンは長いので、そこでどう戦うかが大事。シーズンが終わった時に結果が良かったと思えるように、必死に頑張りたい」。サクセスロードを一気に駆け上がる。【村松万里子】

◆前川の今春キャンプ 実戦初戦の11日紅白戦で早くも4打数4安打。だが、17日楽天戦では盗塁のサインが出ていた中で初球を打ち上げ、岡田監督から厳しい指摘を受けた。それでも翌18日広島戦で2安打とすぐに汚名返上。19日のフリー打撃では新助っ人ゲラから柵越えも決めた。20日サムスン戦では決勝2ランを記録。26日には岩崎、西勇と対戦し、計21スイングで安打性7本。球種とコースを伝えられていたとはいえ、西勇からは右中間へ豪快な柵越えも放った。