日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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北の大地は“門出”にふさわしい銀世界だった。今年からイースタン・リーグに加入するオイシックスの教育リーグ初戦が、雪が積もった日本ハムのホーム、エスコンフィールドで行われた。1日の初戦が5510人、2戦目は5657人を集客した。

しかし、なぜオイシックスの初陣がエスコンなのか? との疑問が生じた。プロ野球界のしきたりでは、ファームだから2軍の球場で開催されるのが通例。日本ハム戦は鎌ケ谷(千葉)のはずだが、エスコンでの“開幕”は異例だった。

この件について、オイシックス球団社長・池田拓史は「ぼくらが新規参入でチャレンジしたことに、こちらがリスペクトというのはおこがましいが、先方が敬意をもってくださった」と日本ハムからの“招待試合”だったことを明かした。

オイシックスが2軍戦に新規参入する申請書をNPBに提出したのは昨年7月31日。半年以上も休日なしで奔走した池田は8月上旬、久しぶりの休暇をとって新たに開場したエスコンを訪れた。

そこで日本ハム側と縁ができた。「もう心身ともボロボロでした」。池田にとって、プロ野球未開の地・北海道に進出し、独自の球団経営で地元に根付くマネジメントは羨望(せんぼう)の的だったに違いない。

「日本ハムさんは、独立リーグの現状、我々が応募した背景をすごく丁寧に聞いてくださいました。日本野球界を俯瞰(ふかん)したとき、ファーム拡大構想がどういう意味をもつかなど、非常に深く理解され、温かく言葉をかけていただいたのです」

9月下旬に内定し、11月22日オーナー会議で承認され、正式参入が決定。その後の12月中旬、日本ハムから、教育リーグの開幕戦をエスコンで開催する企画が池田のもとに届いた。

「もうびっくりしました。鎌ケ谷ならともかく、エスコンですか? と。正直、夢をみているようだったというのが偽らざる気持ちです」

しかも、今回のオイシックス戦の経費は、日本ハム側が負担した。本来、イースタンリーグの規定では、ビジター球団が捻出することになっている。だが日本ハムのほうが「オイシックスに経費の負担なく、遠征できるシステムで招待」する形をとったのだ。

自軍の下部組織でもないのに、わざわざ他球団の経費をもつなど、あまり例がない。影響力をもつ球団からの推薦があるわけではないのに、日本海の荒波を乗り越えるかのように、果敢に新たな道を切り開いた球団への敬意が示されたわけだ。

オイシックスを招待した自腹イベントに、監督の新庄剛志は「ぼくの尊敬する吉村本部長が野球界の発展のため、赤字になったとしてもやる! と決めたので、それに賛同したまでです」と打ち明ける。

日本ハムにとっては経費がかさむ興業だったはずだが、たとえ赤字でも野球界の未来に投資した。今後の「ウィンウィン」に注目。オイシックスの門出、太っ腹な器をみせた日本ハムに拍手を送りたい。(敬称略)