先日、ぜいたくな舞台のはしごをしました。宝塚歌劇星組公演「ロミオとジュリエット」を見た後に、宝塚OGによる「エリザベート TAKARAZUKA25周年スぺシャル・ガラ・コンサート」を観劇したのです。

「ロミオとジュリエット」はフランス発の世界的にヒットしたミュージカルで、宝塚では2010年に小池修一郎演出、柚希礼音主演で初演された。8年ぶり5度目の上演となる「ロミジュリ」に主演した礼真琴は13年上演時の新人公演でロミオを演じた経験があり、19年10月に入団11年目でトップにスピード就任した。持ち前の歌唱力に、ダンスが得意とあってしなやかな動きで、ジュリエットとの恋に疾走するロミオをみずみずしく演じていた。これまでロミオは柚希、音月桂、龍真咲、明日海りおが演じているけれど、礼ロミオは先輩たちに1歩も引けを取ることはなかった。人気のあるトップが退団しても、後を受け継いだトップが新たな魅力で輝きを放つ。108年もの歴史を刻んできた宝塚の強みだろう。

一方、「エリザベート」はウィーン発のミュージカルで、宝塚では96年に小池演出、一路真輝主演で初演され、その後、何回も再演されている人気作品。今回は25周年記念で歴代のトート、エリザベートが日替わりで顔をそろえ、コンサート形式で「エリザベート」の世界を再現した。私が見たのは、02年の花組公演のメンバーが結集したもので、トートに春野寿美礼、エリザベートに大鳥れい、ルキーニに瀬奈じゅん、皇帝ヨーゼフは月組で同役を演じた霧矢大夢が出演した。このメンバーでの上演は1回きりだったけれど、入念な稽古を重ねたのだろう。18年ぶりに挑んだ春野も瀬奈も宝塚時代を彷彿(ほうふつ)とするかっこ良さで、1回だけなんてもったいないと思った。

宝塚は花、月、雪、星、宙の5組体制だが、昨年1月に当時の宝塚歌劇団理事長が「夢組」構想を披露したことがある。25年の大阪・関西万博でOGによる「夢組」を発足させ、宝塚の魅力を世界に発信するという夢のプランだ。今回のコンサートでも、春野や瀬奈らスターだけでなく、アンサブルで出演したOGたちも献身的に舞台を支えていた。

今回のはしご観劇でつくづく思ったのは、宝塚の底力だった。スターはスターの、アンサンブルはアンサブルの魅力、輝きがある。宝塚を見始めて、40年を超えるけれど、宝塚通いはまだまだやめられません。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)