米国の興行師で、ショービジネスの原点を作った、P・T・バーナム(ヒュー・ジャックマン)の物語。心躍って、心震わせる楽曲、歌とダンスの連続に、冒頭からつかまれた。

 一番の盛り上がりは、バーナム一座のパフォーマーたちが歌う主題歌「THIS IS ME」だ。身体的特徴から陰に隠れて生きてきた人たちが、これが私、と歌い上げる。パワフルだが繊細な心の内が見え隠れする歌詞もいい。

 それにしてもジャックマンは優雅だなあ。手足が長くて、キレキレで、声も良くて、いいイメージしかない。ジャックマンのおかげで、おそらくあったであろうバーナムの俗物的な部分がかなりいい感じになっているんだろう。象に乗って駅に迎えに来られても、ジャックマンの無邪気な笑顔なら…、許せる。

 貧しさから成功をつかみ、挫折の果てに、という展開は読めるが、楽曲とパフォーマンスで飽きさせない。妻チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)とのなれそめを歌う場面は、それだけで1本の映画になりそうなぜいたくさだし、グラスを小道具にした酒場でのダンスは、スピード感にわくわくする。【小林千穂】

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