2夜連続で放送されたフジテレビ時代劇「鬼平犯科帳THE FINAL」(2日、3日)の視聴率です(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。歌舞伎俳優中村吉右衛門主演で89年にスタートした人気シリーズが、放送150本目の節目で幕を下ろしました。すっかり1ケタ視聴率が定着しているフジテレビの中で、2夜連続で2ケタを記録しての堂々の幕。根強い人気を見せつけました。

 「鬼の平蔵」と恐れられた火付盗賊改方長官、長谷川平蔵の捕物帖。池波正太郎のかっこいい原作、かっこいい吉右衛門、ジプシーキンクズのかっこいいギターBGMなど、しぶくてスタイリッシュな世界観は時代劇の中でも群を抜いていました。バブル絶頂、トレンディードラマ全盛期に本格時代劇をスタートさせた、当時のフジテレビの勢いも感じます。

 水戸黄門のような分かりやすい勧善懲悪ではなく、善人も悪人も紙一重なんだと思わせるリアリティーが池波作品の魅力。最終話となった「雲竜剣」も、貧しい人や身寄りのない年寄りの命を救うために盗賊となった医者(田中泯)の切ないお話でした。実の息子と斬り合って死ぬ展開に、鬼の平蔵の厳格さと義理人情が絶妙にからみます。医者が残した養生施設を「貧しき者が命をつなぐ粥(かゆ)に善悪の区別がありましょうか。見て見ぬふりをするのも肝要」とお目こぼしする平蔵の広々とした視野が、息苦しい時代にずしんときました。

 最後はからっと明るく、レギュラー陣の笑顔。ごほうびのタイにわいわいと群がる尾美としのりら同心たちの平和なひとときで、彼らともお別れかと思うとほろりときました。ラストシーンは、平蔵が密偵のおまさ(梶芽衣子)や五郎蔵(綿引勝彦)にねぎらいの酌をする粋な計らい。祝い酒を交わし「長谷川さま、どうか末永く」「おう」。かっこいい後ろ姿とともに、かっこいい時代劇がまたひとつ終わりました。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)