視聴率が5・2%に終わった改元特番「ゆく時代くる時代」(4月30日午後11時25分~5月1日深夜0時半)について、上田良一会長が9日の定例会見で述べた所感です。NHKの独壇場である国家行事で、民放に2ケタ視聴率を記録されての4位。公共放送としてこれまでなかった大敗だけに、「しっかりお伝えすることができた」という弁も、少々痛々しい感じでした。

天皇陛下の代替わりに伴い、元号が平成から令和になる歴史的瞬間。民放が看板ニュース番組の拡大版で伝える中、NHKはなぜかバラエティー番組でした。

爆笑問題と指原莉乃さんを中心に、視聴者投稿や中継をネタにボケたりつっこんだり。オープニングから「ゆく時代くる時代」のタイトルを「いくよくるよ!」と叫んで始まり、午前0時の瞬間はスタジオ全員でカウントダウンし「令和ーーー!!」。アニマル浜口さん風に「京子ぉーーーっ!」という叫び声もありました。空騒ぎに続いて渋谷の中継へ。カウントダウンのイベントだけがあり、新天皇即位という午前0時の大ニュースが一切アナウンスされないまま番組が進んだのは、NHKファンとしてはショックでした。

むしろ民放の方が、NHKスタイルをベースに民放らしい工夫を添えていて、端正な見応えだったと思います。

視聴率1位の10・6%を記録した日本テレビ「NEWS ZERO拡大版」の“時代越し”の瞬間は、渋谷スクランブル交差点を上空からとらえたワイドな映像。5秒前からあえて実況せず、人々から沸き起こるカウントダウンという素材の力で、令和の産声を伝えました。有働由美子アナが「新たな時代の幕開けです。この瞬間をもって、皇太子徳仁親王が第126代天皇に即位されました」。本来のニュースをしっかりと伝えてくれました。最初の中継が、被災地、宮城・気仙沼の花火だったのも、番組の志を感じます。櫻井翔キャスターと小泉進次郎議員の同世代対談も見応えがありました。

2位のテレビ朝日「報道ステーション拡大版」は6・6%。こちらは、「令和まであと10秒です」とアナウンスした後、皇居二重橋前の遠景と静かな雨の音、画面下の数字だけで、厳かに改元の瞬間を迎えました。午前0時の瞬間、皇居前広場の方から聞こえてくる歓声にもライブ感があります。「午前0時、この時をもちまして、皇太子さまが新しい天皇陛下となられました」と、やはりニュースを伝えています。こちらも、令和最初の中継は気仙沼の花火でした。

NHK編成センターの責任者によれば、バラエティーにした背景には「その時間に起こっていることをお伝えする」という方針があったとのことです。実際「おはよう日本」から夜の「ニュースウオッチ9」まで、ほぼ報道態勢で生の出来事を伝えていました。「ゴールデンタイムの時間帯、民放さんはほとんどバラエティー番組を放送していた」のとは逆の発想での編成だったようです。

挑戦したわけですから、結果的に作戦ミスとなったことは仕方がないとして、「視聴率は気にしていない」という発言には疑問が残ります。録画視聴の多いドラマの場合は、番組の力が数字とイコールにならないケースもあるので「視聴率は気にしない」もアリかと思いますが、報道系は視聴者の反応がそのまま数字に出ます。大きな出来事の生放送でNHKが4位というのはかつてない重い結果で、大いに気にしてほしいと思うのです。

最近やたらとコンテンツの民放化が激しいNHKですが、こういう時は公共放送の王道パワーでよそを圧倒してほしかったというのが正直なところ。改元の瞬間こそ被災地を忘れないNHKでいてほしかったし、全国に放送局を持つ強みも発揮してほしかったです。変化球もいいけれど、投げられたはずのド直球も、見てみたかったです。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)