心理劇からアクションまで幅広くこなす英俳優リーアム・ニーソン(65)がこのほど、日刊スポーツの取材に応じた。主演映画「トレイン・ミッション」(ジャウマ・コレット・セラ監督、30日公開)は疾走する列車で展開するノンストップアクション。巧みな格闘シーンが注目されるようになったのは、元工作員という設定を56歳の時に演じた「96時間」からだ。

 「脚本にひかれて出た『96時間』をきっかけに、ハリウッドは僕にアクションヒーローのレッテルを貼ってしまった。確かに、若い頃からボクシングをやっていたし、今でもスタントの担当者と動き方を練ったり、リハーサルをやるのは楽しくて仕方がない。でも、もともとアクション俳優希望だったというわけじゃないからね」と苦笑する。

 191センチの長身に彫りの深い顔立ちは、12年の米映画「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」で演じた孤高のジェダイ・マスター、クワイ・ガン・ジンと雰囲気が重なる。笑うと不思議なほど優しさを感じさせる。40代はアカデミー主演男優賞候補になった「シンドラーのリスト」を始め、演技派のイメージが強かった。「タフな男を演じるのも本当は難しい。20年くらい前の撮影で、ヘリにぶら下がった時の恐怖がトラウマになって、実は高いところが苦手なんだ」と明かす。

 アクションヒーローがはまり役になった直後の09年、妻の女優ナターシャ・リチャードソンがスキー事故で亡くなった。45歳の若さだった。アクションに対する熱心な取り組みには、悲しみを忘れようという思いが込められているのかも知れない。

 昨年のトロント映画祭でのジョーク交じりの発言が「アクション引退報道」につながった。「そんなつもりはまったくない。今でも格闘シーンは、僕にとって映画出演の一番の楽しみだから」と断言した。

 一方、毎回のようにアクション映画に登場する銃撃の場面には、ためらいがある。

 「最近も乱射事件が絶えない。若い人たちが銃規制に声を上げるのはとてもいいことだ。数日前の話だけど、その作品の銃の使い方に疑問を持って出演を辞退したばかりなんだ。アクション映画に銃は欠かせないけれど、撃つにはやむにやまれない状況がなければいけないと思っている」

 英国出身ということもあり、過去何度か「007」シリーズのジェームズ・ボンド役に名前が挙がった。

 「今はダニエル・クレイグという素晴らしいボンドがいるからね。僕の年ではボンドの父親役がいいところだよ」と笑った。【相原斎】