ここ最近、NHK周辺がかまびすしい。おそらくきっかけは、昨年11月、高市早苗総務相の発言だった。「既存業務全体の見直しを進め、受信料のあり方について、適正な受信料額の検討を引き続き行うことが必要」というものだった。NHKの肥大化をこれ以上は許さないという、行政側からの強い意志だった。

なぜなら、ここ数年、NHKの受信料収入は右肩上がり。18年度は初めて7000億円を超えた。同局は公平な負担を掲げて、支払いを拒むテレビ設置者には、次々と民事手続きによる支払い督促の申し立てを行ってきた。17年末には、最高裁が受信契約を義務づける放送法を合憲と判断。これで、支払いを拒める法的根拠はほぼなくなり、支払率が上昇していったのだった。

その昔、といっても20年前くらいは、民放に勤務する一部の人たちは、NHKの受信料を支払っていないケースも珍しいことではなかったとも聞く。NHKの集金人が来ても「テレビ局に務めています」と言う人もいたという。民放にとっては、NHKの視聴率の分だけ、売り上げは下がる計算になるだけに、なぜ、自腹で敵に塩を送るのかという論理も成り立つ。もっとも、最高裁の判例以後は、民放関係者といえども、受信料は支払っているはずだ。

関係者によると、NHKサイドの取り立てはかなり厳しいらしい。ある芸能関係者はこれまで、家にテレビがないと主張していたらしい。ところが何かのデータでテレビがあることが判明し、十数年分の受信料として60万円以上を請求されたという。支払いを拒んでいた人たちも、次々と白旗を揚げているようだ。

話がそれたが、7000億円というのはかなりの巨額だ。民放の今年3月決算を見てみると、売上はフジテレビHDが6314億円、日本テレビHDが4265億円、TBSHDが3567億円、テレビ朝日HDが2936億円となっている。民放はHDなので、放送収入以外、例えば、イベントの収入や不動産収入を入れての数字だ。NHKの場合は、純粋に放送に使える金額なので、民業を圧迫しているといえなくもない。

NHKの肥大化とは、古くて新しい問題だった。衛星放送が始まったころから、その声は強くなったと記憶している。行政や政治も巻き込み、水面下でNHKのあり方については議論されてきたが、やはり、最高裁の判例などから、受信料の聴取率が上がり、7000億円を超えたあたりから、もう許容できないという声が高まったようだ。

NHKの会長には今年1月、前田晃伸氏が就任した。前田会長は、NHKらしい構造改革を唱え、波の削減やら、経費の見直しなどを指示し、先日も、3年間で約630億円の経費削減を発表した。だが、受信料の値下げにまでは踏み込まず、さらに、今度は、インターネット事業費の上限額として、受信料収入の2・5%としてきた歯止めを、撤廃する方針まで示した。

今月17日に行われた民放連の大久保好男会長の定例会見では、NHKに対しての厳しい言葉が並んだ。

とはいえ、一般の視聴者にとっては、ネットでいつでもNHKの番組が見られることはうれしいことだ。個人的にも、NHKプラスの配信は現在は1週間で終了してしまうために、もう少し期間を延ばしてほしいと思っている。

各都道府県にある地方局を含めた無料の民間放送と、受信料制度に支えられるNHK。5G時代を迎え、大きな変革が迫ってきていることだけは確実だ。