サッカー元日本代表でタレントの前園真聖(47)が出演する、JリーグのSNSによる誹謗(ひぼう)中傷防止のための啓発動画「ネットいじめ、かっこ悪い。」が4日、公開された。

昨今、SNSなどにより人格を否定するような誹謗中傷がより深刻な問題となっている。Jリーグでも、クラブや選手に対する誹謗中傷が大きな問題となっており、問題を少しでも抑制し、一部の心ない人間によって心を痛めている多くの選手やファン・サポーターを守るために、啓発映像「ネットいじめ、カッコ悪い。」を制作した。

前園は、Jリーグの横浜フリューゲルス時代の1996年(平8)に、公共広告機構(現ACジャパン)のCM「いじめ、カッコ悪い。」に出演した。当時はいじめが社会問題となっていたが、前園はCMの中で

「別に型にはまることないし、カッコつけたっていいと思う。オレもそうだった。でもオレ、いじめなんてしたことなかったよな。だって恥ずかしいだろ、誰か泣かしたり。いじめは最低だよ。カッコ悪いよ。」(原文のまま)

といじめ撲滅を訴えた。Jリーグのスター選手だった前園が、自らの言葉で語ったCMは大きな話題を呼んだ。

その前園が「いじめ、カッコ悪い。」のCMから四半世紀の時を経て「いじめ」「サッカー」「啓発CM」の3つのテーマから連想される人物として、SNSによる誹謗中傷防止のための、啓発動画のメッセンジャーに起用された。

映像には、試合中のように歓声が聞こえるスタジアムのコンコースで、前園が真剣な表情でカメラを見つめる。そして、現代の大きな問題であるSNSでの誹謗中傷、ヘイトや人種差別など「ネットいじめ」への思いを語る。

「いじめ、カッコ悪い。25年前、そう言った。あれから25年。今もいじめはなくならない。SNSでの誹謗中傷、ヘイト、人種差別。匿名で見えないところから誰かをたたいたり、誰かを泣かせたり。何度でもいう。ネットいじめはサイテーだよ。カッコ悪いよ。」

前園は、SNSでの誹謗(ひぼう)中傷=“ネットいじめ”への思いを、再び自身の言葉で、誰もいないコンコースで語り続けた。

前園は撮影前の打ち合わせで、「え、(見なくて)いいよ」と苦笑いを浮かべつつ25年前の「いじめ、カッコ悪い。」のCMを見たという。そして語るメッセージについて「切実に思っていることを言う方が良い気がしますね」と自ら提案したという。

前園は、撮影後「25年前に違う形で社会に問題提起をさせてもらって、今はスポーツ界でも社会でもネットでの誹謗中傷の問題はすごく深刻なものがあるので、自分の言葉で皆さんに語り掛けるじゃないですけど、そういう思いでやらせてもらいました」と振り返った。

25年前のCMについては「『いじめ、かっこ悪い』と言っていましたが、僕がかっこ悪かったですね、今見ると」と苦笑い。その上で「あんな感じでよくやっていたなって思いました。もう少し紳士的に…あの時の自分に言い聞かせてやりたいですけど。ただあのCMが今も時々、話題に上がったり、いじられたりすることもあるんですけど、あの経験をさせてもらったおかげで、また今回こういう話をいただけたので、非常に良い経験だなと思っています」と感慨深げに語った。

25年目から変わったことを聞かれると「年齢を積み重ねて、僕自身も人生の中でいろんな失敗やいろんな経験をしたので、当然考え方も変わっています。自分が今の立場になってスポーツだけでなく、いろんなメディアの中で発言する上で、昔より今の方が責任感を感じますし、自分の言葉1つで周りの環境も変わってくると思うので、責任感は昔もあったつもりですが、今は、よりそれを感じています」と語った。

前園が出演した動画「ネットいじめ、かっこ悪い。」は、Jリーグ公式YouTubeチャンネルと21年シーズンのJリーグ全試合の会場の大型ビジョンで流れる。(リーグ戦1052試合、カップ戦約60試合を想定。来季以降の使用の可能性もあり)