20歳、レアル・マドリードのジュード・ベリンガムの勢いが止まらない。

29日(日本時間30日朝)の欧州チャンピオンズリーグ1次リーグでRマドリードはナポリを4-2と下した。中でも背番号5、イングランド代表MFのプレーに目を見張った。

得点に喜ぶベリンガム(手前)、そのストッキングの後ろには大きな穴が開いている(AP)
得点に喜ぶベリンガム(手前)、そのストッキングの後ろには大きな穴が開いている(AP)

1-1の前半21分にはDFアラバからのアーリークロスを頭で押し込み、勝ち越し点を奪った。また、後半アディショナルタイムにはペナルティーエリアに左サイドから侵入し、右足アウトサイドでのおしゃれなパスでチーム4点目もアシストしている。

Rマドリードに今季加入して16試合で15点目を記録した。ただ、こういう得点に絡んだプレーだけでなく、相手選手を外すターンのうまさ、ボールを奪いにかかる相手を股抜きして入れ替わるなど、その局面、局面で見せるプレーはエレガントであり、かつ力強い。

「エル・ブランコ(白い巨人)」の5番を付け、中盤を制圧している姿はかつてのジダンと重なる。186センチと大柄でありながら、これだけの技術とセンス、そして得点力も併せ持つ。

アンチェロッティ監督は試合後、UEFAの公式サイトでこう発言している。

「毎日、ジュードは我々を驚かせる。毎試合だ。我々だけじゃない、世界のすべてかもしれない。ベリンガムはクラブじゃなく、フットボール界への”ギフト“だ。才能と能力にあふれる彼の姿を見ることは世界にとって喜びであり、彼はこの先も彼で居続けるだろう」

世界屈指の名将の言葉を借りるまでもなく、今季の欧州シーンのブレイク度で言えば間違いなく一番だろう。

世界中のサッカーファンから熱視線を浴びるベリンガムだが、気になるのが「靴下の穴」だ。この日も前半終了間際、足を痛めてピッチに倒れ込んだ。その両足のふくらはぎを覆うストッキングには、それぞれ2つの大きな穴が開いていた。

相手DFに削られたのか? と思われがちだが、そうではない。

これは過去に英メディアによって明らかにされているが、筋肉への締め付けを緩和し、足が痛まないように予防してのもの。不自然で不格好な穴は、もちろんメーカーに特注しているわけはなく、自らハサミで切り込んでいるようだ。

ベリンガムはあらゆる場所に顔を出し、豊富な運動量も持ち味。とにかく走る。だから走り続けられるように、こんな小さな工夫に行き着いたのだろう。

ドリブルで攻め込むベリンガム(AP)
ドリブルで攻め込むベリンガム(AP)

「工夫」と言えば、歴史上の人物となったマラドーナは現役時代、すね当てを前だけでなく、ふくらはぎにも装着した。

削られても足を痛めないための対策だった。相手2、3人に周囲を取り囲まれようとも、パスに逃げることなくドリブルで局面を打開することにこだわった。すね当てでガチガチに固められた足は邪魔で仕方ないと思うが、そこは何を優先させるかの話だろう。

むしろ好対照な2人のスタイルから、サッカーが昔と今で大きく変化したことを表している。ボールをためる古き趣のある「フットボーラー」はピッチから姿を消し、組織の中で個性を発揮できる「アスリート」こそが現代の王道だろう。靴下の穴からそんなことも垣間見ている。

ちなみに競技規則のユニホーム規定には、ウエアを切ることへの禁止条項は見当たらない。だらか意図的にウエアを傷めることは違反ではなく、試合中に審判から咎(とが)められることもない。

ただ、ベリンガムの活躍とともに穴の開いた靴下が世界中に「ギフト」として流行したら…。その時は、さすがに競技規則が変わるかもしれない。【佐藤隆志】