新型コロナウイルスで中断していたJリーグが、J1は7月4日から再開されることになった。本番まで1カ月を切った現在、各クラブで最も忙しいのが「運営担当」だ。

一般には聞き慣れない仕事だが、クラブ内には大きく分ければ、チームを強化・管理する強化担当、チケットなどを売る営業担当、メディアの窓口になる広報担当などがあり、運営担当とは、試合会場の現場責任者という位置付けになる。

記者は、Jリーグ元年からいろんな運営担当と接してきたが、どんな穏やかな性格の人でも試合当日は人相が変わる。それほど過酷で忙しい。

以前、あるチームがふがいない内容で負け続け、試合後に一部サポーターが会場正面玄関に抗議に来た。相手は拡声器を持ち、恐怖心さえ覚える状況だ。その運営担当は、勇気を持って何とか説得し、彼らを引き揚げさせた。もう終電の時間は過ぎていた。

年間でホーム開催は20試合以上ある。常に地元警察と連携を取り、警備スタッフを配置し、チームバスの会場入りの時間も掌握する。試合前日までの準備を含め、1つのミスも許されないような緊張感が漂う。基本的には全アウェーへも同行している。

ましてや今回、Jリーグでは制裁試合をのぞけば、初めての無観客で再開される。新型コロナウイルス感染を予防した上で、試合を無事に成立させなくてはいけない。ドイツでの成功例をヒントにJリーグと各クラブは現在、週に2、3回はオンラインで合同会議を開く。さらにクラブ内でも会議の連続だ。

無観客開催への課題は山ほどある。あるクラブの運営担当が、その一部を打ち明ける。あくまで現時点の意見であり、Jリーグの最終結論ではない上で紹介すると-。

(1)無観客ながら警備は通常並み。会場への不法侵入がないか当日、警備員を各所に配置へ

(2)来場する関係者の選別。選手の代理人、マネジメント関係者らには来場自粛要請へ(人数がふくれ上がるため)

(3)メディア対応。報道陣の来場も人数制限し、試合後は選手と報道陣の間にアクリル板を置くか、オンラインで選手を厳選して取材対応させる

その運営担当は「無観客が終わって、次に5000人以下の観客を入れる段階に入ったら、来場者用のサーモメーターや消毒液の配置場所など、新たな課題が山積みです。この夏、会場内のビール販売もどうなるのやら。やはりアルコールを口にすると、興奮して大きな声が出ますからねぇ…。観客の楽しみを奪うのは心苦しい」と話す。

7月4日はJリーグの新たな旅立ちの日。運営担当にとっても、異次元の闘いが始まる。【横田和幸】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

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◆横田和幸(よこた・かずゆき)1968年(昭43)2月24日、大阪府生まれ。91年日刊スポーツ入社。96年アトランタ五輪、98年サッカーW杯フランス大会など取材。広島、G大阪などJリーグを中心にスポーツ全般を担当。