いつまでも、歓喜の歌が鳴りやまない。

J1昇格、そしてJ2初優勝を信じたサポーターが今季最多1万9066人も駆けつけた。

チケットは前売り段階で完売した。緑一色に染まった収容人数2万人の「サンプロ アルウィンスタジアム」。その中で、松本山雅FCの選手たちの顔には、満面の笑みがはじけた。

勝てば文句なしの優勝の中、決定機は何度もつくった。FW高崎寛之は前半9分にGKと1対1になり、同17、22分にはFKからいずれもフリーでヘディングシュートを放った。だが、ゴールを割れない。後半21分には左CKから、こぼれ球を拾ったDF田中隼磨がゴール前で放ったシュートも、クロスバーに嫌われた。

その間、大分がリードし、一時は2位に落ちた。町田の結果次第では、J1参入プレーオフに回る可能性すらあった。だが、今季34失点の堅守を誇る守備陣に、焦りはなかった。「前の選手は後ろを信頼し、自分たちも前の選手を信頼していた」と主将のDF橋内優也。今季22度目の無失点試合を演じ終えた瞬間、至福のときが迎え入れてくれた。

「本当はね、勝って優勝したかったんですけども、これが我々の実力です。ただ、今日の試合みたいに粘り強く、ボールに対する執着心だとか走力だとか、切り替えの速さだとか…そういうところは優勝に値するチームだなと思います」。反町康治監督はそう言って、選手をたたえた。

初めてJ1に昇格し、勇んで臨んだ15年。しかし、わずか1年でJ2に戻ってくると、16、17年はいずれも最後の最後で涙をのんできた。しかも、このホームスタジアムで。

16年は4カ月間、自動昇格圏内の2位をキープしながら、最終節を前に3位に降格。昇格を懸けたプレーオフに回ったホームでの初戦では、引き分けでも決勝に進む条件の中、6位の岡山に後半ロスタイムに失点して敗れた。

昨季は、勝てば6位以内のプレーオフに回れる最終節ホーム戦で京都に0-1で敗れて、8位と夢破れた。

この2年間、いずれもホームで大勢のサポーターを悲しませて、シーズンを終えていた。3度も同じ“過ち”を繰り返すわけにはいかなかった。だから、DF田中隼磨は真っ先に、サポーターの元へと駆け寄った。「いろんな思いがある中で2年間昇格できなくて、まず、みんなが喜んでいる姿を見たいと思った。気づいたら、サポーターの方に向かっていました」。信じて待ち続けてくれたサポーターと喜びを分かち合った。

来季は4年ぶりにJ1の舞台に上がる。田中は覚悟を明かした。「初めて(J2優勝の)シャーレを持って、このチームにJ1のシャーレを掲げたいという気持ちが浮かんできた。1回、J1で戦って、生き残ることができず、クラブも選手も本当に悔しい思いをしている。その思いは2度としたくない。そのためにも必死にやるしかない。立ち位置をしっかり理解して、このチームの未来のために戦っていきたい」。