4月から始まった「ニッカンジュニア」の日曜日、サッカー評論家のセルジオ越後氏(73)による「セルジオ流 Education」も今回で最終回です。ある時はサッカー解説同様に辛口で、ある時はサッカー教室で子供たちと接した経験から温かい目で、子育て世代や指導者へのメッセージを送ってきました。その「総括編」です。

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-セルジオ越後氏が子どもたちの教育について、強調している1つが「社会教育」の重要さだった

セルジオ越後氏(以下越後) 教育の3本柱は「家庭教育」「学校教育」「社会教育」といわれます。しつけなど「家庭教育」では親から学ぶ。勉強など「学校教育」では教員から学びます。それに対して「社会教育」では触れ合う人々全員が“先生”になりうると思います。最近は、近所づきあいなどが希薄になって、他人と接する場面が減り、子どもが日常生活から学ぶ機会が損なわれているように感じます。

-大切なのは「人づきあい」だという。それを阻む一因にデジタル機器への依存傾向を挙げる

越後 スマホやタブレットがあったら、1人でも寂しくないという。大人がそうだから、子どもも同じようになってしまいがち。デジタル機器が便利で、生活を豊かにしてくれるのは分かるけど、バランスが大事でしょう。このままではAI(人工知能)にすべて持っていかれてしまう。今はアナログのよさを意識するくらいで、ちょうどいいのかなという気がします。

部活動や地域のイベントなど、団体・集団で何かをやるということ、直接、人と触れ合うことを積極的にしてほしいですね。集団の中でこそ、リーダーシップが磨かれ、自分の役割分担=自分の長所を見つけられると思います。人と接することを避ける世の中で、企業や国、世界を引っ張れる人材が生まれるのか、心配になるほどです。

同学年の子と接しているだけでは学ぶものは限界がある。年上の人と接することが勉強になる。

-また、日本やブラジルだけでなく、世界各国の事情を知る視点もあった。

日本は教育環境や経済的に恵まれているがゆえに、子どもに対して過保護になってしまいがちなことにも警鐘を鳴らす

越後 甘やかし過ぎること、過保護になることは、本人のためにならない。物やお金の価値を知らないまま育ってしまい、大人になっても独り立ちできなくなる懸念があります。

中国ではかつて「1人っ子政策」があり、その子の世代が親になりました。その世代は甘やかされて育ってきたので、子どものしつけができません。「かわいがる(甘やかす)ことは分かっていても、教えたり、しかったりする方法は知らない」というのです。そこで、あえて軍隊式に厳しさを教えるビジネスが登場したそうです。日本もそうならないことを願います。

一方で、デンマークでは18歳で大学に入ると、月に7万円ほど支給される制度があると聞きました。条件は親元から離れて独り立ち(自立)すること。実家と近所でも構わないそうですよ。「親離れ・子離れ」するには、いいシステムだと思いませんか? 北欧諸国は年金など社会保障がしっかりしている。「なぜ貯金が必要なの? 死ぬまで国が面倒を見てくれるのに」という具合です。高齢者が貯金をしていないから“オレオレ詐欺”もない。税率や人口など日本とは状況は違いますが、考えさせられる昨今です。

-同時に越後氏は子どもたちの「遊び心」を大切にしている。サッカー教室でも技術より、ボールをおなか(シャツの中)に隠したり、たわいない会話で笑顔を引き出す

越後 子どもが幼稚園の先生を大好きになるのは、同じ目線で「一緒に遊んでくれる大人」だからです。これが小学校に入ると、教える立場の先生は「指示する人」に映ってしまうかもしれません。幼い子どもは親であろうが、他人であろうが、一緒に遊んでくれる人が大好きなんです。子どもの遊びは、大人にとっての財布(財産)みたいなもの。「宿題をちゃんと終わらせたら、一緒に遊んであげる」という言葉は効果的でしょう?

一方、親に隠れてでも電子ゲームやサッカーで遊びたい子どもいます。隠れてまでもやるというのは、相当な努力が必要なはず。本気なんですね。その努力を認めるという選択肢もあると思います。

3カ月間、ありがとうございました。

◆セルジオ越後 ブラジル・サンパウロ生まれの日系2世で、18歳でブラジルの名門コリンチャンスとプロ契約。同国代表候補にもなった。72年に来日、藤和不動産サッカー部(現湘南)でプレー。78年から「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、延べ60万人以上を指導。その経験から「セルジオ越後の子育つ論」など子育て本も出版。93年4月から日刊スポーツ評論家。06年文部科学省生涯スポーツ功労者表彰受賞、13年外務大臣表彰受賞。17年旭日双光章を受章。H.C.栃木日光アイスバックスのシニア・ディレクター、日本アンプティサッカー協会最高顧問。