明治安田生命J1リーグが4日、リモートマッチ(無観客試合)で再開する。新型コロナウイルスの感染拡大による中断の影響で週2試合の過密日程が続く。降格なしの特別ルールで「残留争い」はない。前例のないシーズンを各クラブはどう戦うか。日刊スポーツ評論家のセルジオ越後氏(74)は東京を本命の優勝候補に挙げた。

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欧州各リーグの再開はシーズン終盤で「着地」に向けたものだったが、Jリーグは実質「始動」で、ここが難しいところだ。日本では異例の夏の“開幕”。スタンドが本来の形に戻るのがいつなのか、後半戦の日程やACLの再開、コロナの第2波は? 不透明なことが多いだけに、例年以上にスタートダッシュ、早く貯金をつくった方が有利になるとみられるのは当然だ。

その中で、暑くなった時期に週に2試合というペースは、ターンオーバーできるかどうか、まず選手層の厚さがものをいうのは間違いない。特にベテラン選手が多いと、きついはずだ。回復力のためには選手の努力だけでなく、チームドクターやトレーナーを含めた裏方スタッフ、設備など、ピッチでは見えにくいクラブとしての「総合力」が問われる。同時に昨年のような大雨や台風などの影響も懸念され、コロナ同様に“想定外”のことが起きる可能性がある。その場合のチーム、フロントの「対応力」も試される。

リーグ再開前に名古屋のFWジョーが退団することなった。戦力の問題でいえば、人の移動が制限され、替わりの外国人選手をすぐに獲得できる状況ではないよね。新しく獲得した選手が期待通りではなかったからとか、故障したからとかで、簡単に補強するのは難しい。そういう意味では外国人選手がちゃんと計算できるチームが、アドバンテージを持つのかな。

不確定要素が多い中、リーグ戦の展望、予想も読みにくいよ。そんな中、FC東京はD・オリヴェイラに加え、今季鹿島からFWレアンドロ、磐田からFWアダイウトンが入り、外国人勢に安定感がある。チームも昨季は優勝を逃したものの、シーズン終盤までは首位を走った。秋以降はラグビーW杯の影響で、ホームスタジアムを使えない時期が続いたのが、痛かったのかもしれない。長谷川監督体制も、すっかりなじんできたと思われる。

今季は特別に選手交代が5人まで許され、J2降格がないことから、試合開始から飛ばしたり、リスクを冒しても勝ちに行く展開を予想する人も多い。選手交代については、勝負をつけた後で先発選手を休ませるための交代がベスト。昨季逆転優勝した横浜については、若くて走れる選手が多いのが心強い。ポステコグルー監督の攻撃サッカーも“先手必勝”につながる可能性がある。対して、C大阪など堅守が強みのチームは苦しいかもしれない。

神戸はイニエスタが体力面でどこまで持つか、彼が出られない時間をどうするかがポイント。近年定番となった夏の大物外国人獲得は難しいだろうが、天皇杯優勝がフロックでなかったことを示してほしい。鹿島や川崎Fは実績や安定感は感じつつも、チームの新陳代謝が物足りない。

一方、こういう異例の状況では勢いというのも大きな要素だ。「台風の目」として期待できるのがJ1再昇格の柏。FWオルンガは開幕戦1試合で2得点と爆発力を期待できるし、チームはJ2からJ1に復帰した11年にも「昇格即優勝」という歴史を持つ。機運が高まると、ドラマの再現もありえると思う。

やはり昇格組の横浜FCにも注目する。ベテランが多いだけに、J1でどこまで耐えられるのか…。選手の入れ替えをせざるを得ない。ここで「降格なし」が“勇気”となり、若手にチャンスが回る。優勝争いは難しいだろうが、チームが育つ可能性がある。

プロ選手ならば、観客数に関係なく頑張ります。欧州各リーグを見れば、無観客試合でも警告、退場覚悟のプレーがある。勝利ボーナスがかかっているからね(笑い)。スタンドの観客数は限られていても、テレビやネットで見るファンの数がそのスポーツ、そのチームのステータスという時代だから。(日刊スポーツ評論家)