ロシア人の大富豪でプレミアリーグ・チェルシーのオーナーでもあるロマン・アブラモビッチ氏(55)がポルトガルの市民権を獲得した。アブラモビッチ氏の広報担当者が、同氏が今年4月30日にポルトガルのパスポートを得ていたことを明かした。欧州メディアによると母国ロシア、イスラエルに続き、3カ国目のパスポートだという。
今回はあまりサッカーそのものとは関係のない話だが、興味深い話なので触れておきたい。
ポルトガルとスペインには、中世の異端審問によってイベリア半島から追放されたユダヤ人を先祖に持つ人物に市民権を与えるという法律がある。アブラモビッチ氏は何代にもわたって先祖をさかのぼり、自分のルーツがポルトガルにいたユダヤ人であったことを証明。同国の市民権を得るに至ったという。
これにより、アブラモビッチ氏は欧州連合(EU)を構成する国家の一員として、EU圏内での経済活動が自由に行えることになった。
ただ英国についてはEUを離脱してしまったため、外国人が労働する場合にはビザが必要となる。だが18年にロシアの元軍人で英国政府のスパイとして働いていたセルゲイ・スクリパリ氏の毒殺未遂事件が起こり、英国がロシアの関与を主張。両国間の緊張が高まり、ロシア人にはビザが発行されにくくなってしまった。
アブラモビッチ氏はもともと英国のビザを持っていたが、18年4月に期限切れで失効。そのため新たなビザを得る代わりに同年、イスラエルの市民権を獲得。イスラエルのパスポートがあればビザなしで最長6カ月間、英国に滞在できるため、現在は観光客として英国に入国しているという。
日本では一定の年齢になると二重国籍者は国籍を選択するものだとされているが、海外ではだいぶ事情が違う。アブラモビッチ氏は自分のルーツによってポルトガルの市民権を得たが、経済的な理由で簡単にパスポートを与える国もある。
17年の英ガーディアン紙の報道によると、キプロスは外国人の富裕層に積極的に市民権を与え、その見返りに同国への投資を募ったという。その結果、キプロスは4年間で40億ユーロ(約5200億円)の投資を集めることに成功している。
日本はともかく、世界では今後ますますこういう例が増え、国どうしの線引きが希薄になっていくのかもしれない。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)


