1986年W杯メキシコ大会でアルゼンチン代表を優勝に導き「神の子」と呼ばれたディエゴ・マラドーナ氏が25日、ブエノスアイレス郊外の自宅で死去した。同国メディアによると、心不全を起こしたという。10月30日に60歳になったばかり。栄光と挫折の明暗が色濃い、波瀾(はらん)万丈の人生だった。

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元日本代表監督の岡田武史氏(64=J3今治オーナー)も「まだ60歳で…。早すぎる」とマラドーナさんの急逝に驚いた。「知人が腕に彼の入れ墨をしていて『そんなに好きなの?』と聞いたら『アルゼンチンに行って強盗に襲われても、見せれば逃がしてくれるから』と。本当に大丈夫らしい。まさに神の子。サッカー界の枠を超え、マイケル・ジョーダンやアイルトン・セナのような神懸かった人たちの1人」と評した。

86年W杯は「神の手、5人抜きは当然、自分にとっても強烈だった」。翌87年には対戦した。旧国立競技場で行われた日本リーグ選抜-南米選抜。「個人的な印象だけど、遊んでたというか…本気でやってなかったね(笑い)。試合後、なぜかプーマのキャプテンマークをもらった。すぐ誰かにあげちゃったけど。そういうのに、こだわりがない人間で」という、岡田氏らしい思い出も残っている。

続けて「メッシも、まだ彼を超えていないんじゃない?」と指摘した。「誰もボールを奪えなかった。メッシは失う時もあるけど、マラドーナは速い上に体がゴムまりみたいで。はねるような瞬発力でかわし、当たりにいっても、はじき返す力強さがあった。ほとんどボールを取られることがなかったんじゃないかな」と天賦の才に舌を巻いた。

10年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会には、ともに自国の監督として出場した。現役ほど輝けず「スーパースター過ぎて指導者としては難しかったのかな」と推し量りつつ、「それでも英雄として愛された。悪いことをしても彼だけは許された。神の子だから、としか説明できないよ」と悼んだ。【木下淳】