【モンテレイ近郊(メキシコ)6日(日本時間7日)=佐藤成】ついにこのときが来た。サッカー日本代表はFIFA W杯北中米大会に向けた事前合宿の4日目を実施。練習後にMF伊東純也(33=ゲンク)ら5人の候補が、キックの名手である中村俊輔コーチから招集されて直接FKの練習をした。キッカー不在が叫ばれて久しい代表だが、本番直前に「俊輔塾」が開講。正確無比なクロスを得意とする伊東が新たな武器を手にし、世界に立ち向かう。
◇ ◇ ◇
非公開練習が終わってグラウンドに戻ると、ワクワクする光景が広がっていた。ゴール前に壁が設置され、数人の選手がボールをセット。今大会から入閣した中村コーチが笛を吹いて次々と蹴る。伊東もそのうちの1人だ。雰囲気のある弾道がネットを揺らす。手応えたっぷりに振り返った。
「サイドとかCKはよく蹴ることがあるんですけど、直接FKはあんまり蹴ったことはなかったんで、思ったより蹴れるなと思いました」
世界的な名手から薫陶を受ける。この日は映像を撮っただけだっため、後にフィードバックは改めてになる見通しだが「一番FKがうまい人から教われるのは大きい」。背番号14にとって、小学時代から代表の10番を背負っていた中村コーチはアイドル的存在だった。地元が同じ神奈川県出身ということもあり「日本人では一番憧れていた選手。最初会った時は中村俊輔だって感じでした」と目を輝かせる。
伊東が憧れる中村コーチが代表引退後、本田圭佑や遠藤保仁がその役割を担った。2人がそれぞれ10年W杯南アフリカ大会の1次リーグ第3戦のデンマーク戦で初めて決めてから、日本はW杯で直接FKの得点がない。22年W杯カタール大会後に限っては親善試合を含めてもノーゴールだ。
勝つ確率を1%でも上げるためにキッカーの育成は急務。「俊輔塾」開講から初戦までは1週間だが、決勝トーナメントを見据えれば約1カ月ある。伊東は「本番で決められたらいいかな」と意欲を示した。
高校時代に直接FKを決めた記憶はあるが、プロ入りしてからは狙ったこともないという。この日、トライしたのは「落とすイメージ」。初戦の相手、長身軍団のオランダにもってこいの球種だ。「少ないチャンスで決められれば、本当にチームにとってプラスになる」。いきなり“イナズマ”を落とすため、急ピッチで習得する。
◆「俊輔先生」と直接FK 名手で知られる中村コーチは日本代表で通算7本を決めている。これは93年のJリーグ開幕後、FWカズと並ぶ最多タイ。左足で美しい弧を描き「魔法」と称された技術で、Jでは単独1位の24本を記録した。2位は遠藤保仁の17本。スコットランド1部セルティック時代の06年11月、欧州CLのマンチェスターU戦で決めた約25メートルは伝説。今年2月に英スポーツ・バイブルが発表した「史上最高のフリーキッカー25傑」ではメッシ、マラドーナに続く7位で、ベッカムの9位より高く評価されている。
◆10年南アW杯VTR 1次リーグ初戦のカメルーン戦は本田の決勝点で1-0と勝利し、白星発進となった。第2戦でオランダに健闘するも、0-1で惜敗。決勝トーナメント進出をかけた第3戦デンマーク戦では、本田が無回転キックでFKを沈める。さらに遠藤のFK、岡崎のゴールで3-1と快勝した。決勝トーナメント1回戦は、南米の強豪パラグアイと激突。両者譲らず0-0のままPK戦に突入したが、3人目の駒野が失敗。3-5で屈し、8強進出はならなかった。


