陸上の日本選手権(博多の森陸上競技場)の男子100メートルは9秒台決着の期待が高まっている。そのムードを作り上げているのはともに9秒台の自己記録を持つ2強。サニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)と桐生祥秀(23=日本生命)だ。

サニブラウンは5月以降、追い風参考記録も含め3度の9秒台。7日の全米大学選手権決勝では9秒97の日本新記録を樹立した。昨年はけがに苦しんだが、筋力が明らかにパワーアップして戻ってきた。走りの特徴は43~45歩で駆け抜ける大きなストライド。中盤から後半の爆発的なスピードは世界クラスだ。スタートで大失敗がなければ、2年ぶり2度目のVの大本命となる。

5年ぶりの優勝を目指す桐生も好調を維持している。今季は10秒0台を4度。5月のセイコーゴールデングランプリ大阪では17年世界選手権金メダルのジャスティン・ガトリンに0秒01差に迫る10秒01(追い風1・7メートル)をマークした。4月にはアジア選手権を制するなど課題だった勝負強さも見せている。いいスタートから中盤でトップスピードに乗って、サニブラウンの猛追を振り切る形が理想だ。

虎視眈々(たんたん)と2強崩しに狙うのは、小池祐貴(24=住友電工)。昨夏のアジア大会200メートル王者は今季は100メートルのレースに多く出場。春は追い風参考ながら10秒0台を並べ、好スタートを切ると、公認記録となった5月のセイコーゴールデングランプリ大阪では10秒04。自己記録を一気に0秒13も縮め、日本歴代7位をマークしている。6月の欧州遠征でも手応えをつかんでいる。

不気味なのはケンブリッジ飛鳥(26=ナイキ)だ。3月のオーストラリアでのレースでスターティングブロックがずれるアクシデントに見舞われたこともあり、左太もも裏に張りが出た。その影響で、春は好調だったが、十分にレースを積めていない。ただ16年大会の覇者は3年連続で日本選手権3位以内という勝負強さを備える。

17年世界選手権では準決勝まで進み、10秒07の自己ベストを持つ多田修平(22=住友電工)はまだ完全復活とはいえない。5月のセイコーゴールデングランプリ大阪では10秒12を出したが、今月9日の埼玉県内の記録会では10秒41(追い風1・0メートル)。表彰台に上がるには。得意とする鋭い飛び出しを見せ、相手にプレッシャーを与え、何とか粘りたい。

ただ前評判通りにならないのが、日本選手権でもある。16年は桐生、山県の争いと見られていた中、ケンブリッジが優勝し、リオデジャネイロ五輪の切符をつかんだ。2年前も、大会前は注目が低かったサニブラウンが予選で自己記録を0秒16縮める10秒06の快走を見せ、勢いそのまま初優勝まで駆け上がった。今年の台風の目は誰か。白石黄良々(23=セレスポ)、坂井隆一郎(関大4年)、デーデー・ブルーノ(東海大2年)、宮本大輔(東洋大2年)ら急成長を見せている若手がどこまで上位と戦えるかも注目のポイントになる。

自己記録10秒00の山県亮太(27=セイコー)が気胸により、欠場を余儀なくされたが、ハイレベルな争いになることは変わらない。秋の世界選手権(ドーハ)の参加標準記録(10秒10)を満たしている選手は、日本選手権の優勝で、世界選手権の切符を得る。現状、男子100メートルは山県、桐生、サニブラウン、小池の4人が参加標準記録をクリアしている。

 

・日程

予選 27日午後3時5分~

準決勝 27日午後7時35分~

決勝 28日午後8時30分~

・主な出場選手(自己記録)

サニブラウン・ハキーム(9秒97)

桐生祥秀(9秒98)

小池祐貴(10秒04)

多田修平(10秒07)

ケンブリッジ飛鳥(10秒08)

飯塚翔太(10秒08)

坂井隆一郎(10秒12)

長田拓也(10秒14)

白石黄良々(10秒19)

宮本大輔(10秒23)

川上拓也(10秒24)

デーデー・ブルーノ(10秒29)