16年リオデジャネイロ五輪競泳男子400メートル個人メドレー金メダルの萩野公介(24=ブリヂストン)が6日、都内で復帰を宣言した。モチベーションが保てず3月以降は休養していたが、今月4日から練習を再開。2月16日のコナミオープン以来となる公の場で、休養前と同じ「東京五輪での複数金メダル」を目標に掲げた。レース復帰は8月のW杯東京大会か9月の茨城国体を予定。金メダリストが東京五輪へ、リスタートした。

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ベスト体重72キロより5キロ増と、ややふっくらした顔で口を開いた。「東京五輪での目標は、ずっとぶらさずに複数種目での金メダル。自分の気持ちに正直になって、頑張ろうと心が決まった」。約3カ月のブランクは決して短くはないが「(不安は)全くないです」ときっぱりと言った。

人生で初めて葛藤だった。「少しずつ泳ぐ結果に対して泳ぐ前から不安になっていった」。2月のコナミオープンで精彩を欠いて「僕は水泳がすごく好きだけど、嫌いになりつつある」。自分で自分を追いつめて孤独を感じた。3月からプールを離れ、4月の日本選手権を欠場。「神童」だった萩野にとって人生初の長い休み。「引きこもるとまずい」とドイツ、ギリシャを巡り、多くの人に会った。

平井コーチからは「すべて自分の気持ちに従え。辞めるという選択肢も頭に入れて、泳ぎたいなら泳げ」と言われた。3月末には地元栃木県の関係者に「自分の引き際は自分で決めろ」と言われた。「このまま終わっていいのか。嫌だし、水泳が好きだし、もっと泳ぎたいし、もっと高みを目指したい。辞めるのは今じゃないなと思った」。同じころ日本選手権を多くの選手が泳いでいた。「皆、必死で頑張っている。またあの舞台に立ちたいなと思った」。5月からプールに入って、今月4日から拠点である東洋大の練習に部分合流した。

「人に自分の弱みを伝えることができなかった。苦手で。『できない』と人に言ってダメ、自分で解決してから、と思っていた。でも(今後は)理想は目指していく中で、ストレスがかかったり、つらいと思っても、人に『こう考えている』といえれば、1人でやるよりはいいと思う」

今後は東洋大で練習し、復帰レースは8月のW杯東京大会を軸に、9月の茨城国体も視野。「今は水泳がすごく好きで、泳ぎたいという欲求がでてきている。楽しいなと思ってる」。東京五輪へ、萩野が戻ってきた。【益田一弘】