【鄭州(中国)=三須一紀】20年東京五輪選考レースで注目が集まった女子シングルスの代表争いがついに決着した。世界ランキング10位の石川佳純(26=全農)が世界選手権女王で同3位の劉詩■(中国)に0-4で敗北したが、平野美宇(19=日本生命)も同18位の王芸迪(中国)に1-4で敗れたため、世界ランキングのポイントでリードする石川が3大会連続の五輪代表を確実にした。平野は16年リオデジャネイロ五輪に続きシングルスの代表権を逃した。

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ミックスゾーンで取材を受けると、たまっていた涙が一気にあふれた。号泣。平野の受け答えは、言葉にならなかった。

王に圧倒された。第2ゲームは一時、5-0とリードするも、最終的に7-11と逆転を許した。3ゲームを連取された後の第4ゲームは返したが、最後は1-4で敗戦。勝てば獲得できた東京五輪のシングルス代表権は、あと1歩のところで手からこぼれ落ちた。

7歳で目標に掲げた「五輪で金メダル」の夢。母真理子さんは「1度もぶれず、逃げずに戦ってきた美宇を尊敬する」と、娘をたたえた。ただ、現時点で夢への挑戦権に手が届かなかった。

北米オープン決勝で石川に敗れた時点で「正直厳しいと思っていた」と気持ちの整理はついていた。ただ、16年リオデジャネイロ五輪で落選した後の苦しかった3年間を思い出し、涙があふれ出た。

17年10月、信頼する中国人コーチが諸事情で帰国し、卓球を辞めることまで考えた。「ラケットを握ると涙が出て、吐き気もした」ほど。18年7月になんとか同コーチが中国から戻り、気持ちを向上させてきた。

「アドレナリンが出ない大会があった。すごく頑張りたいという気持ちがあまり出なくて…」。それでも今年は「70%の試合で気持ちがついてきた」と自分を奮い立たせ、前向きに戦ってきた。

初五輪の夢は来年1月6日発表の団体戦枠のみとなった。「待つしかないけど、ランキング的には選ばれなかったら『うん?』という位置にはいるかな」と、自信をのぞかせた。

※■は、雨カンムリに文の旧字体