日本ラグビー協会は28日、9月1日からリーグワンを除く国内の全てのカテゴリーで導入する「タックルの高さに関する試験的ガイドライン」のメディア向け説明会を開催した。

5月に国際統括団体ワールドラグビーの評議委員会が、選手のウェルフェア向上の一環として「コミュニティーラグビー」を対象とし、試験的な取り組みへの参加を推奨すると正式承認。日本協会内で議論を進め、9月からはリーグワンを除く全てのカテゴリー(ミニ、ジュニア、高校、大学、社会人、クラブ)にて、従来は「肩の線より上」と定めていた危険なタックルを「胸骨より上」とする。

U20(20歳以下)の国際大会は「エリート」と定められており、日本協会ハイパフォーマンス部門の田中勝悟氏は「日本のラグビーでどこをエリート、コミュニティーとするかは、シンプルにはいかない。協会内でも議論があった。一番の目的は安全性を高めること。代表にいく選手は(エリートルールに)適用が必要になるが、コーチングで問題ないだろうと議論しています」と経緯を明かした。

胸骨より上へのダブルタックル(2人目のタックル)も反則の対象となる一方、ボール保持者の上体に対して力を加えることなく受け止める、引き倒すなどの行為は、危険性がなければプレーが継続される。日本協会レフリーマネージャーの久保修平氏は「すでに研修もしています。みんながアウトプットし、理解しながら進めていきたい。一番難しいのはダブルタックル。なるべく数多くの試合を、シーズンの前に吹いていく」とレフェリー目線で試験的ルールへ対応する方法を示した。

「コミュニティーラグビー」の試験的ルール導入の現状は、各国によって異なっているという。フランスでは20年からタックラーの義務を「ウエストより下」とし、ダブルタックルは禁止。ニュージーランドでは23年2月から「胸骨より下」、2人目のタックラーは「肩より下」と定めているという。

日本協会では指導者向けの講習実施や、問い合わせ窓口などを設置しており、久保氏は「頭と頭が直接コンタクトする危険なタックルが散見されているのが、試験的ルールを適用する背景。プレーヤーの安全を守るために、コーチは正しいスキルを教える。レフェリーは危険なタックルがあった際に適切に判定する。プレーヤー、コーチ、レフェリーの3者が一体となっていきたい」と力を込めた。【松本航】