2023年の「植村直己冒険賞」が16日、都内で発表され、イラクの巨大湿地帯(アフワール)を6年かけて探検調査した探検家の山田高司氏(65)とノンフィクション作家の高野秀行氏(57)、ヒマラヤの400メートル以上もある人類未踏の大渓谷「セティ・ゴルジュ」を踏査した渓谷探検家の田中彰氏(51)とフリークライミングインストラクターの大西良治氏(46)の2組4人が受賞した。

「植村直己冒険賞」は1984年に亡くなった世界的な冒険家の植村直己氏の出身地、兵庫県豊岡市が主催して1996年にスタート。28回目の今回、初めて2組が受賞した。

山田氏と高野氏は人類最初の文明の古代メソポタミア文明が生まれた、東京都を上回る規模の巨大湿地帯アフワールに長期滞在し、足かけ6年にわたって現地の暮らしや伝統を体験。特に「アザール」と呼ばれる布のルーツがユダヤ人にあり、ムスリムによって各地に波及した可能性を見いだすなど、宗教、民族などさまざまな角度から取材し、記録にまとめた。

高野氏は「(受賞は)夢にも思わなくて青天のへきれきでした。アフワールは長らくフセイン政権で入れず、その後も内戦で危険地帯となり、調査ができず、全貌が明らかにされていない地域でしたので、どういう土地かを探って、ほかの人たちの分かるように伝えたいと思った。それが多少なりともできたのかなと思う」と振り返った。

田中氏と大西氏は22年11月と23年2~3月にかけて、ヒマラヤ・アンナプルナ山群にある巨大な大地の裂け目「セティ・ゴルジュ」を人類で初めて踏査した。狭い場所で幅数メートル、深さは400メートル以上もある大渓谷は「悪魔の谷」と呼ばれ、これまでNASAや地質学者の調査隊も近づくことができなかったが、入念に事前調査を行い、3000メートルを超える岩場にベースキャンプを設置して、400メートルのロープとヘッドランプを頼りに合計3・5キロを踏査。ゴルジュ周辺の地層を克明に記録する科学史上にも残る成果を上げた。

「上から雪解け水と一緒に落石がバンバン落ちてきて、逃げ場もなかった。当たったら大けがをするか死んでしまうので、祈って先に進むしかない。想定できないリスクがあった」と大西氏。渓谷探検家の田中氏は「僕らのやっていることは渓谷や落ちくぼんだ場所に入るので地味で、人から評価されることもあまりない。今回の受賞は、世間の目が注がれる契機になってよかった」と受賞を素直に喜んだ。

授賞式は6月1日、植村直己氏の出身地の兵庫県豊岡市で行われる。【首藤正徳】