今月上旬に千葉・幕張で開催されたイベントで、次世代タクシーに試乗してきました。大手自動車メーカーが10月から発売する、障がい者や高齢者にも適応したミニバン型の新型車です。想像以上に使いやすそうで驚きました。横にスロープを取り付ければ車いすに乗ったまま乗車できて、助手席をたたむと車内で車いすを転回できます。シートアレンジも多様。まさに時代を先取りした車でした。

 後部トランクも広く、車いすは余裕で積めますし、スーツケースも平積みできます。従来のセダン型のトランクにはスーツケース2つは入らないので、旅行者にも高いニーズがあると思います。車内が広く、天井も高いので体の大きな外国人でも快適に乗れます。20年に4000万人と予想される訪日客の人気も広まるはずです。

 開発当初は「手動の車いすが楽に乗れる」というコンセプトだったと思います。さらに次世代の課題解決をめざし、いろんなアイデアを取り入れたことで、高齢者や大きな荷物を抱えた旅行者などより多くの人が利用しやすいタクシーになりました。まさにユーザーファーストの車と言えます。

 開発した同メーカーでは旧来のセダン型の販売をやめて新型車に切り替える方針で、20年までに都内の全タクシーの2割が、この車両になるそうです。従来より燃費もよくて環境にも優しい。社会的な意義だけでなく、ビジネスにも好影響があるはずです。

 色は「ジャパンブルー」といわれる伝統的な深い藍色。ロンドンの黒、ニューヨークの黄色のように、東京もタクシーの色で街の景色が変わると楽しみにしています。東京パラリンピック開幕まであと3年。この秋頃からいろんな変化がでてくるはずです。次世代タクシーにその先陣を切って大会ムードを醸成してほしい。

 高度成長期で迎えた64年大会で新幹線や高速道路がレガシーになったように、ダイバーシティーが重要視される20年大会で、機能性と多様性を備えた次世代タクシーが、象徴的なレガシーになるかも知れません。

(パラリンピック・アルペンスキー金メダリスト、日本パラリンピアンズ協会副会長)

 ◆大日方邦子(おびなた・くにこ)アルペンスキーでパラリンピック5大会連続出場し、10個のメダルを獲得(金2、銀3、銅5)。10年引退。現在は日本パラリンピアンズ協会副会長で、来年の平昌パラリンピック日本選手団長。電通パブリックリレーションズ勤務。45歳。