昨年のリオデジャネイロ・パラリンピック陸上男子走り幅跳び(切断などT42)で金メダルを獲得したハインリッヒ・ポポフ(34=ドイツ)が26日、東京・江東区立有明小(赤堀美子校長、児童728人)を訪問した。総合医療福祉機器メーカー、オットーボック ヘルスケア社(本社ドイツ)のアンバサダーとして、障がい者スポーツの普及活動にも力を入れており、子どもたちと交流した。

 体育館での講演では、9歳の時に骨肉腫で左大腿(だいたい)を切断した経験に触れた。その上で「前向きに、夢を持って、先生や両親の話をよく聞ききながら、努力を続ける」ことの大切さを強調。日常生活用から競技用の義足に着け替える作業も実演した。リオの金メダルを子どもたち全員の手に触れさせると、笑顔でハイタッチ&ハグ。グラウンドでは一緒に土のトラックを走り、ランニングフォームなどを指導した。「2015年から日本でランニングクリニックなどをスタートさせました。今日会った子どもたちの中から五輪やパラリンピックで活躍する選手がきっと誕生すると思う」。この日朝に来日して学校に直行するスケジュールだったが、終始柔らかい笑顔で予定を1時間近くオーバーするなど大サービスだった。

 リオでは6メートル70を跳び、山本篤(35=新日本住設)を8センチ差で振り切っている。そのライバルがスノーボードで平昌(ピョンチャン)パラリンピック出場を目指していることを聞くと、「クレイジーだ」と笑いながら「本当なのか? アツシはナショナルチームのメンバーに入っているのか?」と記者に逆取材するなど興味津々だった。

 100メートル12秒11、走り幅跳び6メートル77の世界記録保持者でもある。今年7月のロンドン世界選手権での引退を表明していたが、撤回。同選手権は欠場し、来年6月に地元ドイツで開催される欧州選手権をラストステージに設定した。「もう、自分はやるべきことをやったし、そろそろ後輩たちに道を譲る時期に来ている」。04年アテネ大会からパラリンピック4大会連続出場。走り幅跳び、100、200メートルの3種目で金2、銀1、銅3つのメダルを手にしてきたスターアスリートは「20年にはコーチ、アドバイザーという形で戻ってきたい」と、指導者として東京パラリンピックに参加する考えを明らかにした。【小堀泰男】