20年東京パラリンピック開幕まで今日29日でちょうど1000日。柔道(視覚障害)男子90キロ級の広瀬悠(はるか、38=伊藤忠丸紅鉄鋼)は、その大舞台で“格差婚”を解消するメダルを狙う。夫人の順子(27=同)は一緒に出場した昨年のリオデジャネイロ大会57キロ級で銅メダル。自身は12位に終わっただけに、亭主の意地にかけても負けられない。夫婦そろって日本武道館の表彰台に立つのが目標だ。

 うらやましいぐらいに仲がいい。柔道の父嘉納治五郎師範が見守る講道館道場でも2人で記念写真をパチリ。26日、全日本視覚障害者大会での1シーンだった。海外招待選手も参加した大会で、順子は男女を通じて日本選手ただ1人の優勝者に。一方の悠は準優勝と、ここでもちょっぴり“かかあ天下”だった。

 「確かに格差がついちゃいましたね~」と夫は苦笑いする。一緒にメダルを狙ったリオで初出場の妻は日本女子初のメダルを手にしたが、自らは初戦、敗者復活戦を連敗。初出場だった08年北京大会の100キロ級5位を下回る12位だった。以来、夫婦の目標は「東京でそろってメダル」になった。

 同じような人生を歩いてきた。小2で柔道を始め、高校で全国総体出場。その後に病気で視力が落ち、1度柔道を離れながら再開した。海外遠征で知り合って15年に結婚。夫は妻のコーチ役でもあり、練習パートナーとしても支え合う。

 欧米に加えて中央アジア勢、韓国の台頭で日本は厳しい状況にある。「リオのメダルでプレッシャーも感じます。しっかり力をつけて東京でも期待に応えたい」と順子。悠は「奥さんは銅で僕が銀メダルかな」とニッコリ笑った。でも、本音は違う。コーチとして順子を金に導き、自分も同じ色のメダルを-。それが最高の“格差婚”解消になる。【小堀泰男】

 ◆20年東京パラリンピック 8月25日(火)から9月6日(日)まで行われる第16回夏季大会。東京では64年の第2回大会以来で、同一都市での複数開催は夏季初。新競技のバドミントンとテコンドーが加わり、22競技537種目が実施される。選手数の上限は4400人で、女性や障害の重いアスリートの参加機会が増やされる。