杉村英孝(39=伊豆介護センター)がボッチャ個人で日本勢史上初メダルとなる金メダルを獲得した。BC2(脳性まひ)の決勝で、16年リオデジャネイロ大会で個人、団体ともに金メダルのウォンサ・ワッチャラポン(タイ)に5-0で勝利した。

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第1エンドで自分のボールをジャックボールにビタビタに寄せる正確なコントロールで2-0と先制。同エンドで投げた球が密集する球に乗り上げる得意技「スギムライジング」も繰り出した。「完勝というか、やってきたことを試合で出すだけ。自分のプレーを心掛けた。金メダルにつながってよかった」。16年リオ大会覇者でタイの国民的英雄に、得点を許さない完璧な試合運びだった。

練習も生活も、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた。19年12月から7月の日本代表の壮行試合までの間、実戦の場がなかった。先天性の脳性まひで手足の動きが不自由。日常生活はサポートを必要とするため、移動も制限された。「今までの日常ではないことが1番大変。感染に対する不安はもちろんありました」。同県内のビルのオフィスフロアにパラ会場と同じ素材のコートを敷き、本番を見据えた練習を続けた。コーチにオンラインで指導を受けた。

3大会連続で出場。リオ大会チーム戦で銀メダルに貢献したが、個人ではメダルには届かなかった。東京大会を見据えて体力づくりに加え、競技用具も徹底的に改善した。車いすは市販の折り畳み式からフレームが固定されたものに変更。右手で握るバーの位置など、細かく調整を繰り返した。「体と向き合ったし、車いす、ボール、競技用具も1つ1つ見直し、自分の体にマッチするものを作り上げてきた。多くの方のサポートや支援のおかげだと思っている。思いを1つにして勝ち取ることできた金メダルです」。周囲への感謝の金メダルとなった。

試合後、笑顔で小さくガッツポーズ。コーチと抱き合うと、目が涙で光った。余韻に浸る間もなく、2日からチーム戦初の金メダルを目指す戦いが始まる。【近藤由美子】

◆杉村英孝(すぎむら・ひでたか)1982年(昭57)3月1日、静岡県伊豆市生まれ。先天性の脳性まひのため両手足が不自由で、特別支援学校の高等部3年生の時、先生が見せたビデオでボッチャと出会う。01年に競技を開始。得意技は密集する球に乗り上げて目標球に接触させる「スギムライジング」。趣味もボッチャ。ニックネームは「すぎちゃん」。