バレーボールVリーグの選手だった小松沙季(26=高知県協会)は、6人で争った予選1組で1分14秒310の5着となり、準決勝に回った。後方からのレースとなったが懸命に前を追い続け、「しっかりやってきたことを出せた。食らいついて行けたかな」とうなずいた。

体格は小柄でも元気にあふれ、18年までVリーグ2部のブレス浜松でプレー。退団後に指導者としての道を歩み始めるも、19年6月に体調を崩して入院した。約1年後にようやく退院したものの、両足と左手にまひが残り、車いす生活を余儀なくされた。

ふるさとの高知に戻ってリハビリを続ける中で、カヌーと出会った。今年3月から本格的に水上練習を開始すると、瞬く間に上達。約2カ月後の5月に行われたワールドカップ(ハンガリー)で5位に入り、日本代表に内定した。

状況が急展開していく中で、「何年もパラリンピックにかけてきた選手がいる。自分が日本代表にふさわしい存在になれるのか」と戸惑いを感じたこともあったそうだが、「迷ったときは厳しい方を」と、東京大会出場を選択。それからこの日までの約3カ月は「1分1秒を大切に、中身を重視」し、さらなる特訓を重ねてきた。

準決勝は3日に行われ、3着以内に入れば同日の決勝に進む。「見ている人にカヌーは楽しいな、パラスポーツはいいなと感じてもらえたら」と意気込む小松。競技歴はまだ半年程度しかない最強の初心者は、「なんとしてでも決勝に出たい。やるからには1番を目指す」。怖いもの知らずで、思い切って“アタック”する。【奥岡幹浩】