近年、資金難が目につくスペインリーグ、ラ・リーガ。そのリーガを率いるのがテバス会長です。8月4日に英国の投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」から、総額27億ユーロ(約3500億円)を資金調達すると発表しました。その後のクラブ会議で承認はされましたが、この資金調達に反対したのがレアル・マドリードとバルセロナ、アスレティック・ビルバオの、リーガ創設以来2部に落ちたことがない3クラブと2部のオビエドの合計4クラブです。リーガが調達したこの資金のうち、90%がテレビの視聴者数やソーシャルネットワークの運用具合、そしてシーズン成績などに応じて中長期的に各クラブに分配される内容となっています。当初は非常に魅力的な話と感じるものでした。バルセロナもこれがあればメッシとの契約はなんとかなると踏んでいた事も事実のようです。しかし最終的に「この先50年間という長期にわたって、各クラブの放映権収入の一部が不当に奪われることになる」などとしてレアル・マドリードのペレス会長が反対。ここに追随する形で最終的にリーグの資金調達自体は承認されたものの、レアル・マドリードやバルセロナを含む4チームは今回のリーグの調達した分からの配分を受け取らないとした。その代わりに既存の放映権などについては影響を受けないことになり、チームサイドとしてみれば最低限の部分を保守した形となりました。今回はこのCVCキャピタル・パートナーズについて探ってみたいと思います。 

会社自体は1981年にイギリスで設立され、世界24カ所に合計250人の投資専門家が配置されています。その運用資産は総額1178億ドル(約13兆円)にもなるようです。アジアでは主に2億5000万ユーロ(約325億円)から15億ユーロ(1950億円)程度の消費者部門やサービス部門の高品質事業に投資しており、日本国内では建設仮設資材や物流機器の製造・販売をする企業に投資していたり、外食チェーン、リラクゼーションサロンを運営する会社などに出資しています。今年4月に東芝に買収提案を行ったのもこのCVCキャピタル・パートナーズです。資生堂から日用品部門を買収したことを今年に入ってから発表しており、社名を目にした方もいるのではないでしょうか。長期間にわたる資本注入を通じて投資先企業の事業再編を図ることに長けており、まさにリーガはこういった彼らの得意分野の案件になっていたと見られます。スポーツ領域の実績では、フォーミュラ1(F1)を運営するフォーミュラワン・グループの大株主になった過去があり(2017年1月に売却)、最近ではシックス・ネイションズ(Six Nations、6カ国対抗)というヨーロッパの6カ国が参加している組織に3億6500万ポンド(約547億5000万円)を投資しています。具体的に投資に対してどこで回収しているのかと言う部分までは明記されておりませんが、リーガの例から行けば放映権収入の一部で回収が賄われていると考えられます。彼らにしてみれば事業投資しつつ、比較的確実性の高い放映権利を通しての回収プランというのは非常に魅力的です。しかし、メッシ、Cロナウドがいないリーガがまさに魅力的なコンテンツになり得るかどうかは、サッカーファンの目線からすると「?」がつく可能性はあります。

いずれにしろ、この一見甘そうな話に飛びつかなかったレアル・マドリードを含めた3チームとオビエド、そしてそれに飛びついたテバス会長の対抗図がはっきりした形になりましたが、今後の展開次第でどちらが権力をより握っていくのか、非常に見応えのあるバトルになっているのではないでしょうか。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)