2022−2023シーズンが終わり、話題は移籍などに移行しています。多額の移籍金を伴う数多くの移籍話に盛り上がるマーケットですが、1、2年前を振り返ってみると、無観客で試合が行われていました。チケット収入が全く見込めなかった状況は、完全に忘れ去られてしまいました。その環境下で、マンCは巨額なオイルマネーをバックにようやく勝ち取ったヨーロッパ王者の座ではありますが、中東に出入りしていると、どうやらそのオイルマネーにも限界が来ているような噂を耳にします。いわゆるバブルが弾ける寸前とも言えるのではないでしょうか。


先日サウジアラビアに住む大学院時代の同級生と意見交換をしていたところ、日本からは見えにくいサウジアラビアの現状が浮かんできましたので今回は現地の様子をお伝えしたいと思います。


皆さんもご存知の通り、数百億円という桁違いの移籍金を捻出しています。各国のトップリーグでプレーするスター選手を中心に、主力選手を引き抜いてしまっています。そのサウジに「ビジョン2030」と呼ばれる国家プロジェクトがあるのはご存知でしょうか。2016年に発表された、いわゆる国家レベルの社会・経済変革プランです。


その中に、国民のために雇用を創出し全般的な生活の質を高めるよう、世界的プロスポーツイベントを多く開催して中東地域を代表する国家・サウジアラビアを確立するというものがありました。さらにはこの計画を元に、炭化水素依存型経済のビジネス化や文化・ハイテク産業の発展を推進させていくと発表されており、スポーツはそのハブになる役割を果たすと位置付けているようです。世界最大級のスポーツイベントを開催することで、観光を中心としたビジネス機会を増やし、そしてそこに連動させて雇用をさらに促進させ、これらが国民意識を高めていくことにつながるとしています。


2030年までに述べ1億人の観光客を見込み、世界的なスポーツイベントを招致することでバリューチェーンの全ての段階においてパートナーシップ、投資、スポンサーシップのための新たな機会を創出し、国外からの観衆に対して多様性、経済の潜在力を示していく模範となる、とも記されています。


一方ではオイルマネーの限界が近づいているとも報道されていたりもするようです。「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といった言葉が日々聞かれるように、世界的に脱化石エネルギーの動きは加速。身近なところでいえば、日本政府は2035年までに純ガソリン車の新車販売をゼロにする方針を打ち出したところです。約10年で、サウジアラビアの市民にも大きな変化が見られていると聞きました。国家自体は2014年以降赤字続きとなっており、2018年からついに税金制度が付加価値税という形で導入され、2020年にはそれが5%から15%に引き上げられました。


こういった経済政策の裏には、国民の反発を抑えるような形で補助金制度を取り入れたり、女性の社会進出を支援するなど、今までにはない政府主導の動きがあるとされています。さらには海外コンテンツの導入が図られており、今サウジアラビアでは韓流ブーム真っ最中のようです。まだまだ多くの政策が予定されているということではありますが、カタールワールドカップの成功を横目にその動きはより加速していくと見られています。


それにしてもロナウドは年俸2億ドル超とも言われており、日本円にして300億円近いわけですが、そのほかもベンゼマ、カンテが年俸1億ユーロ超(約150億円)と報道されるなど、他の選手もそれくらいの規模間での取引がなされていると報じられています。サウジアラビアに挑戦する日本人選手が出てくるのか、そしてDAZNなどでサウジアラビアリーグが中継される日が来るのか、今後の動きに注目して行きたいと思います。


【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)