元ドイツ代表のヴィッセル神戸FWポドルスキとの対戦を前に、柏レイソルの主力は一様に「ワクワクしている」や「楽しみ」と話す。決して建前のコメントではなく、目を輝かせ、心待ちにしている様子だ。主力の多くを占める若い選手にとっては、初めて経験する世界トップクラスとの対戦となるからだろう。

 今年、日本代表に初選出されたGK中村航輔(22)のほか、DF中谷進之介(21)と中山雄太(20)のセンターバックコンビなど、将来の日本代表を背負うと期待される人材は少なくない。そういった選手が、ドイツをW杯優勝に導いたポドルスキにどこまで通用するのか。楽しみにしているサポーターも多いはずだ。特に柏レイソルの場合、所属選手の多くは下部組織出身だけに、サポーターとしては愛着もひとしおだろう。7月30日のベガルタ仙台戦の先発11人のうち、実に8人が下部組織出身だった。自前で日本代表クラスの選手を数多く育てられれば、普及と育成を重視するJリーグの理想型といえる。

 下部組織から育った選手は多いが、実は必ずしも千葉県出身ではない。中村は東京・北区、中山は茨城・龍ケ崎市と、県外から通っていた選手も多い。神奈川県のJリーグクラブ関係者は「神奈川の場合、(横浜F・)マリノスや(川崎)フロンターレ、(湘南)ベルマーレがあるし、近くにもFC東京や(東京)ヴェルディなどがあって選択肢が多い。親御さんからしたら、プロまで行ける可能性が高いチームに行かせたいけど、選択肢が多いから力のある子が分散してしまい、プロになる選手の割合が少ないという実績になる。その点、レイソルは、古くから実績がある上に、近くにJクラブが密集しているわけではないから、少し遠くても才能のある子が集まる。だから次々とプロにまで成長する子が出てきて、それが実績になって、また才能のある子が集まる」と、近隣の県などを巻き込み、好循環が生まれる状況を説明していた。

 前身の日立製作所時代からサッカースクールを開催した歴史に加え、現在は独自に海外遠征を行うなど、魅力的な下部組織に成長したことが、好循環を生み出した背景にある。下部組織単独で、マブチモータースはユニホームスポンサーの契約を締結している。柏レイソルの下部組織は、それだけ魅力もブランド力もあると認識されてきた。

 現在はマルセイユに所属する日本代表DF酒井宏樹(27)も、オフで帰国すると、柏レイソルの試合を観戦に訪れる。下部組織の時代から同じ釜の飯を食った仲間が数多くいるため、今もファミリーのように迎えられる。

 「柏から世界へ」が、チームとサポーターの合言葉だ。元ドイツ代表を0点に抑えても、仮にボコボコにやられたとしても将来、柏を、日本代表を支えるための貴重な経験。ポドルスキを柏に迎える5日のヴィッセル神戸戦は、多くの若い主力選手にとって「柏から世界へ」の第一歩となる。

 ◆高田文太(たかだ・ぶんた)1975年(昭50)10月22日、東京都生まれ。99年入社。写真部、東北総局、スポーツ部、広告事業部を経て、今年4月から12年ぶりにサッカーを担当。J1横浜、柏、J2湘南、千葉などを担当。社内では1、2を争う大食いと自負している。