お笑いタレント又吉直樹(40)が、「火花」で芥川賞作家になって以来の話題となるかもしれない。

元Jリーグ監督で、現在は女子サッカー国内初のプロリーグ「WEリーグ」ノジマステラ神奈川相模原の北野誠監督(53)が、直木賞を目指し、小説家デビューの準備に入った。本気の執筆家活動だという。

彼は松竹芸能所属のタレントと同姓同名だが、サッカーを指揮する正真正銘のプロ監督。今オフに京都に帰省した際、近所のコメダ珈琲でパソコンを打ち、今では原稿用紙10枚分相当になった。

小説の舞台は、10~18年まで北野監督自身が指揮したJリーグ・カマタマーレ讃岐(現J3)だ。当時は四国リーグ、JFL、J2へとドラマのように昇格していった。その体験を元に、小説でも讃岐の監督が主人公になり、低迷したチームの空席だらけのスタジアムから話は始まるという。

高松市生まれの北野監督は名門・帝京から日立製作所(現柏レイソル)に進んだFWで、スペインへ指導者留学の経験もある。ロアッソ熊本や讃岐、FC岐阜と多くのJクラブを指揮。昨年はなでしこリーグだったノジマで、初めて女子の指導に携わった。

北野監督はとにかく正直に、真正面から選手に向き合う。熱血漢だが、邪心も功名心もあり、正義だけを振りかざさないところが人間的でいい。だからプロクラブからオファーは途切れない。9年間務めた讃岐の監督を退任する際、後援会有志が地元の四国新聞紙に感謝の広告を出した逸話もある。

小説はあくまで、コロナ禍のおうち時間を利用しており、本職のサッカー指導をおろそかにしているのではない。元来、読書や文章を書くのが趣味で、昨年6月からは公式ブログ「腹の底から笑いたい」を開設。サッカーへの情熱や人生訓をおもしろく記し、時に笑いやオチも付く。

9月に開幕する記念すべき第1回のWEリーグでは2年目のノジマを率い、超攻撃的なサッカーでタイトル獲得を目指す。ただ、女子サッカーは世間での認知度が依然として低いのも事実。だからこそ小説挑戦は、本人も「究極の話題作り」と認めつつ、執筆は全力で取り組む。コロナ禍が奇跡の直木賞作家を生むかもしれない。【横田和幸】