18年9月6日に発生した北海道胆振東部地震から3年がたった。地震発生時にサッカー男子日本代表が宿泊していた札幌市内のホテルの小原誠一支配人(48)と代表担当の高橋博幸フロントオフィスアシスタントマネジャー(47)を取材した。当時の話を聞くと、森保一監督(53)の思いやりがあふれる一面を知ることができた。
日本代表は翌7日に札幌ドームでチリ代表との対戦が控えていた。森保監督の初陣となる予定だった。だが、午前3時7分、地震が発生した。当時、全員が各部屋で就寝中だった。
同ホテルは自家発電により全館停電を免れた。そのため、断水もなく、用意していた食材での食事提供が可能だった。高橋アシスタントマネジャーが印象に残っているのは、森保監督らが心配そうに「他のみなさん(宿泊客)はどうされるのですか? 僕たちを特別扱いしないでください」という気づかい。札幌市内ではコンビニやスーパーに行列ができ、食料が消えていた。テレビなどの情報で、ホテルの外がどんな状況になっているか、知っていたからだ。
チームは予定どおり同8日にチェックアウトした。その帰り際だった。森保監督はすれ違うホテルスタッフ1人1人へ「ありがとうございました」と深く頭を下げ、感謝を伝えた。バスに乗り込む前にも一礼。出発を見送った小原支配人は「目は涙ぐんでいらっしゃった」と思い起こす。
今年6月。森保ジャパンは、あの時実現しなかった札幌ドームでの試合に臨んだ。今度は新型コロナウイルスの影響で対戦相手のジャマイカ代表が来日できず、急きょU-24日本代表との試合に変更されるなどハプニングはあったが、プレーする姿を届けた。試合前日会見で森保監督は当時を振り返って「我々はホテルの中で何不自由なく過ごさせてもらった。またあらためて試合をする機会が札幌であれば、戻ってきてお礼や感謝を伝えたいと思っていた」と話していた。
感染対策のためホテルスタッフとチームとの接触は制限はされたが、森保監督は再会を喜び、うれしそうにあいさつしていたという。非常時こそ、人柄が表れると感じる。【保坂果那】